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2020.01.10

資格取得費用に給与課税が不要な要件

※2019年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回は、実務上・税務調査でも
よく問題となる、使用人が負担した従業員の
「資格取得費用」の経済的利益・給与課税
について解説します。

まず、通達を確認しますが、下記通達は
平成28年度税制改正により変更しており、
旧通達は9-15でした(趣旨は変わりません)。

所得税基本通達36-29の2
(課税しない経済的利益……使用人等に対し
技術の習得等をさせるために支給する金品)
使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、
役員又は使用人に当該役員又は使用人としての
職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、
又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、
講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に
充てるものとして支給する金品については、
これらの費用として適正なものに限り、
課税しなくて差し支えない。

本通達から、使用人が負担する資格取得費用に
給与課税しない要件は3つとなります。

(1)業務遂行上必要であること
(2)職務に直接必要な技術・知識を習得させること
(3)費用として適正なもの(不相当に高額はダメ)

資格取得費用について経済的利益が発生しない
要件として重要なことは、「水平的公正性
=全従業員を一律に取扱うこと」を
満たす必要はなく、該当する従業員の職務内容
によって相違があっても問題ありません。

「所得税基本通達逐条解説(平成29年版)」
にも、下記の記述があります。

「もともと使用者が使用人等にその職務遂行に
必要な技術、知識等を習得させることを通じて
その者の職務内容の質的向上を図るためのもので
あって、それによりその使用人等が知識、資格等を
取得したとしても、それは、使用人等が
使用者のためにその職務を遂行する過程において
自ずから習得する技術、知識又はいわゆる
社内研修により習得する技術、知識等と
本質的に異ならないと考えられる」

一般的に、組織内で従業員ごとに業務・職務内容は
相違することから、会社が求めるスキル・知識は
違っていて当然であり、水平的公正性(一律要件)
は求められないことになります。

例えば、税理士事務所(もしくは法人)が、
税理士試験科目合格者である職員に対して、
税理士資格取得のため、大学院の授業料を
負担して資格取得を求めた場合、税理士事務所
の業務において必要な資格であることから、
経済的利益はないものと判断することができます。

なお、税務調査において取得した(する)資格が
「一身専属であり独立開業できる」からとして
否認指摘された事案を知っていますが、
これは明らかに調査官の誤りです。

個人が取得する資格は、車の免許など
もともとが一身専属であって、上記の
税理士資格のように独立開業できる資格であっても
上記通達規定に沿っている限り、
経済的利益は発生しないことになります。

次回は、上記の論点を
さらに掘り下げて解説します。

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