• HOME
  •  › ブログ
  •  › 社長の妻が私的に利用する法人名義の車両
2019.03.19

社長の妻が私的に利用する法人名義の車両

※2018年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「社長の妻が私的に利用する法人名義の車両」ですが、

平成24年11月1日の裁決をご紹介します。

同族企業の場合、「法人名義の車両を親族が私的に使用している」

ということもあり得ますが、当然、これは税務調査で問題になります。

これが争点の1つになったのが、本裁決です。

請求人は本件車両に係る租税公課、保険料、減価償却費などを

損金の額に算入していました。

そこで、原処分庁は下記の更正処分を行なったのでした。

本件車両は、購入当初からG代表の妻であるNが使用しており、

車両取得費等に相当する金額はいずれもG代表に支払った

役員給与に当たる。

また、重加算税も賦課されました。

争点は「車両取得費等は、事実を隠ぺい又は仮装してG代表に対し

支払った役員給与の額に当たるか否か」です。

具体的に見ていきますが、同族企業においてはよくある論点なので、

長くなりますが、重要な部分すべてを抜粋します。

◆認定事実

〇本件車両の購入に関する事項

・G代表の妻は、本件車両の購入に関し、ディーラーとの間で、

平成20年1月16日付の新車注文書を取り交わした。

本件注文書の買主注文者の欄には、請求人の名称、住所及び電話番号等が

記載され、代表取締役の印章の印影がある。

・請求人は、平成20年2月14日、本件信販会社との間で、

前代表者及びG代表の妻を連帯保証人として本件車両に係る

オートローン兼保証委託契約を締結した。

・請求人が本件車両を購入した際の支払総額は、5,598,240円である。

・このうち本件ディーラーに対して、平成20年3月3日に

本件信販会社から5,579,580円(ほか振込手数料420円)が支払われ、

平成20年3月7日に請求人から残額17,715円(ほか振込手数料525円)が

支払われた。

・請求人は、本件ローン契約に基づき、平成20年3月から

本件信販会社に対し借入金の返済を行っており、

別表6の「原処分の額」の「支払金額」の各「支払利息」欄記載の金額は、

その返済と併せて支払われた利息の額である。

なお、本件各事業年度の支払利息の総額は、

平成20年6月期が70,204円、平成21年6月期及び平成22年6月期が

それぞれ210,612円であり、請求人はその全額を損金の額に算入した。

E 平成23年2月15日付の本件車両の自動車検査証には、

「所有者の氏名又は名称」欄に本件信販会社の名称が、

「所有者の住所」欄に本件信販会社の所在地がそれぞれ記載され、

また、「使用者の氏名又は名称」欄に請求人の名称が、

「使用者の住所」欄に請求人の所在地がそれぞれ記載されている。

〇本件車両の保有に関する事項

・本件車両の納車先は、G代表及びG代表の妻の自宅であり、

納車後の本件車両の保管場所も同地であった。

・本件車両の車検や法定点検の際の連絡先として

本件ディーラーに登録されていたのは、G代表の妻の携帯電話番号であった。

この前提の下、国税不服審判所は下記と判断したのでした。

〇本件車両取得費について

・請求人が、(1)本件車両の購入に関する注文の当事者であり、

(2)本件信販会社を通じて本件車両の売買代金を支払い、

(3)自動車検査証に使用者として記載されているところ、

これらの各事実からすると、本件車両の取得者は、請求人であると

認められる。

・この点に関し、原処分庁は、本件車両はG代表の妻の個人使用の目的で

購入したものであるから、本件車両取得費がG代表に対する給与であると

主張しているところ、確かに、本件車両の納車場所や保管場所が

G代表の妻の居宅であったことや、本件ディーラーからの連絡先が

G代表の妻であったことなどからすると、本件車両をG代表の妻が

個人的に利用していることが認められる。

・しかしながら、G代表の妻が本件車両を個人的に利用していると

いえるに留まるのであって、請求人からG代表に対して

本件車両の贈与があった等、請求人が一定の行為をしたことにより

実質的にG代表に対して給与を支給したのと同様の経済的効果を

もたらしたとまでは認めることができない。

・したがって、本件車両取得費が役員給与に当たるとはいえないから、

原処分庁の主張には理由がない。

〇 本件車両関連費用等について

・本件車両はG代表の妻が専属的に利用していたと認められるところ、

それは、G代表が実質的経営者としての権限を利用して

請求人が所有する本件車両をG代表の妻に使用させていたと

認めるのが相当である。

・G代表は、請求人に対し、本件車両関連費用に相当する金員の支払を

していないのであるから、本件車両は、請求人からG代表に対して

無償で貸与されていたと認められる。

・したがって、G代表はこれにより通常支払うべき対価の額相当の利益、

すなわち本件車両について所得税法第36条《収入金額》第1項でいう

金銭以外の物又は権利その他経済的な利益(以下「経済的利益等」という。)

を享受しているということができる。

・G代表は、役員に該当するところ、法人税法第34条第4項は、

役員給与には経済的な利益を含む旨規定しているから、

本件車両の利用により享受する経済的利益等も役員給与に当たる。

・この場合において、所得税法施行令第84条の2《法人等の資産の

専属的利用による経済的利益の額》は、法人又は個人の事業の用に

供する資産を専属的に利用することにより個人が受ける経済的利益等の額は、

その資産の利用につき通常支払うべき使用料その他その利用の対価に

相当する額(以下「資産利用対価額」という。)である旨規定している。

・これを本件についてみると、本件車両を専属的に利用する場合の

資産利用対価額を客観的に算定することは困難であるから、

当該資産の取得時の価値を基礎に算出するのが合理的であり、

本件車両の取得価額を基礎として、その使用可能期間に占める

貸与期間に相当する額を算出した上、それを当該貸与期間の月数で

均等にあん分して算出される金額(以下「あん分取得価額」という。)

及び1か月当たりの本件車両関連費用の合計額を1か月当たりの

資産利用対価額とするのが相当である。

・その場合、本件車両の使用可能期間については、

資産の使用又は時の経過による当該資産の価値の減少分を算定する

減価償却費の計算における法定耐用年数を採用するのが相当である。

・また、貸与期間については、その定めがないことから、

法定耐用年数と同一とするのが合理的である。

・そうすると、あん分取得価額は、本件車両の取得価額を基礎として、

減価償却資産の耐用年数に関する省令別表第一に定められている年数

(「車両及び運搬具」の「自動車」欄の「その他のもの」)である6年の

期間により、均等にあん分計算するのが相当である。

・本件車両関連費用のうち、自動車保険料の額及び本件ローン契約に

基づく支払利息の額は、いずれも一定の契約に基づき継続的に

役務の提供を受けるために支出されるものであり、

請求人がこれらの費用を負担したことによりG代表が受ける

経済的利益等も継続的に供与を受ける利益であるといえる。

・他方、本件車両関連費用のうち、自動車税、自動車取得税、

自動車重量税及び本件ディーラーに対する手数料等

(以下、これらを併せて「本件自動車税等」という。)の額は、

継続的に役務の提供を受けるための支出金ではないから、

G代表は、請求人がその支払をしたときに経済的利益等を享受したといえる。

・当審判所において、G代表の役員給与に当たる経済的利益等の額

(資産利用対価額)を算定したところ、別表6の「審判所認定額」の

「支払金額」欄記載のとおりとなる。

→ TAINSも確認しましたが、別表6は黒塗りになっており、

数字の確認はできません。

・原処分庁は、本件車両関連費用について、事実を隠ぺい又は仮装して

G代表に支払った役員給与に当たる旨主張するが、

本件車両関連費用については、それぞれ租税公課、保険料又は

支払利息等の勘定科目をもってその帳簿に記載されており、

事実を隠ぺい又は仮装していたと認めるに足る証拠はないから、

原処分庁の主張には理由がない。

いかがでしょうか?

要は「使用料を取っていれば問題ない」ということです。

部分的な使用という場合は合理的な按分計算ということも

あるでしょう。

同じような論点は世の中で多いでしょうから、

是非、覚えておいてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。