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2016.03.16

簿外経費を認めさせるには

※2014年7月配信当時の記事であり、

以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

私はメルマガ、セミナー等でよく、

「税務調査の立証責任は税務署(調査官)にあるのだから、
否認指摘を受けて、こちらが説明・反論しても調査官が
納得しない場合は立証責任は税務署側にあることを主張するように」

とお伝えしています。

では、立証責任はどんな場合にでも税務署側にあるのかと
いえばそうではなく、納税者側にある場合もあり得ます。

たとえば、当初申告で経費計上していないものを、
調査の段階で認めてもらう、といった場合です。
(つまり、否認指摘ではなく、新たな認容です)

実務上、こういうことはありえて、売上や雑収入の除外を
している場合に、その資金使途において、事業用経費に
支出しているケースが多くあります。

いうなれば、事業用経費をねん出するために、経営者が
収入を除外しており、かつ経費が認められるのであれば、
収入と追加的経費がイコールになるため、経費が新たに
認められれば、増差所得が発生しないこともあり得ます。

このようなケースで難しいのは、「簿外の経費」の多くは、
領収書等を保存していないことが多く、
税務調査で主張しても、証拠がないこともあるからです。

もちろんこのようなケースは、何も収入を除外していなくても、
当初申告で計上していない経費を、追加的に認めさせる場合でも
まったく同じケースに分類されます。

追加的な経費計上について争った事例は多いのですが、
少し古い公開裁決事例で、このようなものがあります。

「請求人が主張する本件旅費交通費等は、簿外経費に係るものであり、
また、請求人が提出した本件説明資料は請求人の記憶のみに基づくもので、
他に同資料を裏付ける領収書等の証拠資料の提示がないことから、
本件旅費交通費等の存在を認めることはできないとした事例」
(平成6年12月22日裁決)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/48/03/index.html

この裁決事例からわかる通り、領収書などがなくても、
せめて支払いの相手方などを明示できれば、調査官に対して

「支出の事実を反面調査で確かめてきて欲しい」

と主張できるのですが、さすがに何も
明示しなければ(できなければ)認められません。

また、国税内でも上記、立証責任については
周知されている事実内容で、

「課税関係訴訟事件判決速報(NO.1301)」
(東京国税局 課税第一部国税 訟務官室
平成26年1月14日)

の個別通達においても、国税勝訴の具体的判決を引用し、

「本件費用の支払のためになされたものであることを
合理的に推認し得る具体的な証拠を提出しなかったことから、
本判決は、原告は、本件費用の存在及び金額を合理的に
推認させるに足りる立証を行っていないとして、
本件費用を必要経費に算入することはできないとした。」

「このように、税務調査において、納税者が簿外費用の存在を
主張することは、ままあることであるが、その場合には、
納税者が提出する証拠資料を十分に精査し、当該証拠資料により、
簿外費用の存在が合理的に推認し得るか否かを検討した上で
費用として認容するかどうかを判断する必要がある」

と、見解を載せています。

勘違いしていただきたくないので、話をまとめると、

・原則として、税務調査の立証責任は税務署にある

・ただし、追加的費用を認めさせるのは、
 納税者側に立証責任がある

・追加的費用に関する証拠資料はできるだけ提示すべき

・領収書等がないからといって、絶対的に
 認められない、というわけではない

ということです。税務調査で簿外費用を
認めさせたいときの参考にしてください。

久保憂希也

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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