2015.10.14

役員報酬の適正額とは?

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「役員報酬の適正額とは?」ですが、

平成9年9月29日の裁決を取り上げます。

この事例は非常勤取締役ABC3名への役員報酬が否認された事例ですが、

前提条件は下記となっています。

○ パチンコホールを経営する同族会社

○ Aの役員報酬、( )書きは原処分庁が認定した適正額

・ 平成4年7月期 714万円(132万円)

・ 平成5年7月期 934万円(150万円)

・ 平成6年7月期 954万円(192万円)

○ Bの役員報酬、( )書きは原処分庁が認定した適正額

・ 平成4年7月期 326.4万円(132万円)

・ 平成5年7月期 656.4万円(150万円)

・ 平成6年7月期 686.4万円(192万円)

○ Cの役員報酬、( )書きは原処分庁が認定した適正額

・ 平成4年7月期 408万円(132万円)

・ 平成5年7月期 738万円(150万円)

・ 平成6年7月期 768万円(192万円)

結果は棄却となって請求人が負けたのですが、その主張の中で

従業員の中の給与額が多い4名を比較に出し、「不相当に高額でない」

と主張しています。

ちなみに、この4名の給与額は下記となっています。

○ Dの給与額

・平成4年7月期 約756万円

・平成5年7月期 約786万円

・平成6年7月期 約787万円

○ Eの給与額

・平成4年7月期 約649万円

・平成5年7月期 約719万円

・平成6年7月期 約723万円

○ Fの給与額

・平成4年7月期 約577万円

・平成5年7月期 約594万円

・平成6年7月期 約593万円

○ Gの給与額

・平成4年7月期 約522万円

・平成5年7月期 約537万円

・平成6年7月期 約541万円

また、国税不服審判所は原処分庁が選定した類似法人の非常勤取締役の

役員報酬の平均額を計算したところ、下記となりました。

○ 平成4年7月期 122万円

○ 平成5年7月期 116万円

○ 平成6年7月期 180万円

さらに、請求人の売上高、売上総利益、使用人給与の伸び率の関係(下記)

からも判断しています。

○売上高、売上総利益の伸び率

・ 平成4年7月期を100とする

・ 平成5年7月期 115.6、100.2

・ 平成6年7月期 107.2、109.4

○ 使用人1人当たりの平均給与支給額、使用人給与の最高額

・ 平成4年7月期を100とする

・ 平成5年7月期 104.9、104.0

・ 平成6年7月期 106.4、104.1

○ Aの役員報酬

・ 平成4年7月期を100とする

・ 平成5年7月期130.8

・ 平成6年7月期133.6

○ Bの役員報酬

・ 平成4年7月期を100とする

・ 平成5年7月期 201.1

・ 平成6年7月期 210.3

○ CBの役員報酬

・ 平成4年7月期を100とする

・ 平成5年7月期 180.9

・ 平成6年7月期 188.2

このようになることから、売上高、売上総利益、使用人給与と比較して、

相当高い伸び率であると認定しています。

ちなみに、平成25年4月26日のメルマガで書きましたが、

名古屋地裁(平成6年6月15日、控訴棄却、上告棄却、確定)では

売上約1億9千万円、代表取締役(当然、常勤)の役員報酬1,800万円、

所得金額約138万円の事例で、過大役員報酬と否認されています。

この事例でも売上、売上総利益、使用人給与の伸び率との比較が

ポイントにもなりました。

もっとも、1,800万円とはいえ、

○ 類似法人の代表取締役の役員報酬の平均額の約2.93倍

○ 類似法人の代表取締役の役員報酬の最高額の約2.14倍

という論点もありましたが。

いかがでしょうか?

役員報酬は役員退職金に比べて否認事例は少ないことも事実です。

また、会社に利益が出ていれば「もっと増やしたい」という要望を

受けることもあるでしょう。

もちろん、実質基準は上記のような総合勘案になる部分ではありますが、

一気にある程度の額を増額するなら、そのリスクの説明はしておくべきです。

そうしないと、もし否認された場合に「先生がいいと

言ったのに・・・」ということになってしまいます。

どんな場合でもそうですが、税務である以上は常にリスクはあります。

税務調査の現場ではOKでも国税不服審判所や裁判になったら厳しいと

いうものもあります。

だからこそ、多少でもリスクのあるものは事前にきちんと説明をした上で、

進めていくことが必要なのです。

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※2013年10月の当時の記事であり、
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