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2023.04.21

所得の帰属:原則的な考え方

※2022年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務判断のみならず、税務調査対応においても
実務では【所得の帰属】が問題になりがちです。

所得の帰属という論点を考えてみれば、

・個人間での切り分け
・法人成りのケース
・役員/従業員個人と法人
・口座や資産の名義の問題
・相続財産の帰属および財産から生じた収入

など税目がまたがるパターンが多く、
所得を誰と判断するかで税額が大きく異なるケースが
多いことから、税務調査では特に問題になり、かつ
判断基準が曖昧であることから、何から反論して
いいのかが難しい論点でもあります。

本メルマガでは「所得の帰属」に関して、
できる限り実例を紹介しながら、実務に即した
内容を複数回にわたって解説していきます。
今回はまず、全体を通した原則的な考え方です。

税務上では、所得課税における共通ルールとして
「実質所得者課税の原則」があります。
所得税法第12条および法人税法第11条において
概念的に規定されています。

事業における収入が誰に帰属するかは
非常に難しい問題ではありますが、一方で
不動産や金融商品など、資産から
生じる収入については、原則として
資産保有者=名義人と考えられます。

所得税基本通達12ー1
(資産から生ずる収益を享受する者の判定)
法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する
者がだれであるかは、その収益の基因となる
資産の真実の権利者がだれであるかにより
判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、
その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。

資産から生じる所得の場合、それを親族などに
安易に移転できると、所得分散を容易にし
税負担を免れる手法となり得るからです
(この点は、事業を執行・役務提供している
ケースと分けて考える必要があります)。

わかりにくいので、税務調査で指摘を受けた
相談実例を挙げます。

・親(所有者)から子へ土地を使用貸借
・子が土地賃貸借契約をして第三者から地代を収受
・子が不動産所得を計上し申告
・税務調査で親の所得であると指摘を受けた

この否認指摘(所得の帰属)に反論するには、
子が自身の「危険と計算」において、たとえば
立体駐車場を設営・運営・管理しているなど、
特殊な事情がない限りは非常に難しいでしょう。

なぜなら、上記が許されるとするなら、
親の(不動産)所得を子などの親族に移転する
ことが容易にできてしまうからです。

このように、所得の帰属を税務判断する場合は、
まず法律的な帰属をベースに考え、例外的に
経済的な帰属を考えることになります
(学術的に言えば、「法律的帰属説」と
「経済的帰属説」が両立しています)。

このあたりは、下記の国税論文にうまく
解説されています(所得税の範疇だけですが)
ので、ぜひ参考にしてください。

「実質所得者課税に関する一考察-
所得税における所得の帰属判定を中心に-」

来週水曜の本メルマガでは、法人と個人
(従業員など)における所得の帰属を
類型に分けて解説していきます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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