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2019.11.25

重加算税が取り消された事例(その4)

※2018年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「重加算税が取り消された事例(その4)」ですが、

平成30年3月7日の裁決をご紹介します。

まずは、この事例の前提条件です。

〇農地の譲渡に係る譲渡所得の申告における譲渡費用が争点

〇請求人は当該農地で農業に従事していた弟に対して支払った金員を、

当該農地の譲渡所得の計算上、譲渡費用にしていた。

〇その後、請求人は当該金員の一部を譲渡費用から減額する修正申告

〇原処分庁が、減額後の残金は譲渡費用とは認められないとして、

所得税等の更正処分

〇確定申告の際の譲渡費用を仮装したとして、

修正申告、更正処分に係る重加算税の賦課決定処分

争点は

〇理由付記の不備

〇譲渡費用の該当性

〇仮装の事実の有無

の3点ですが、本メルマガでは3番目の争点のみを取り上げます。

国税の主張は「譲渡費用にならないことを認識していたにも関わらず、

領収証における名目を「離農補償費」又は「離農補償金」とした」

というものです。

これに対して、国税不服審判所は下記と判断しました。

なお、前提条件がかなり複雑な事案なので割愛しますが、

詳細をお知りになりたい方は裁決文をお読みください。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/110/06/index.html

なお、「離農補償金」は譲渡費用となることをまずお伝えします。

〇請求人が、請求人の弟Dに農地法上の耕作権がないことを知っていたとしても、

そのことをもって直ちに、Dとの間の貸借状態解消のために支払った

本件各金員が譲渡費用にならないことまで認識していたとはいい難い。

〇かえって、原処分関係資料によれば、請求人は、調査担当職員に対し、

Dには農地法上の耕作権がないことを理解しつつ、

本件各金員を支払った旨申述した一方で、

長年本件各農地を耕作してきたDに対し、地域の慣例同様、

離作に伴う金銭を支払うべきと考えていた旨も申述したことからすると、

請求人は、Dに農地法上の耕作権がないにしても、

慣例に従って金員を支払う必要があるという認識に基づき、

本件各金員が離農補償金であり、譲渡費用であると考えていた可能性が

あるというべきである。

〇請求人が、本件各不動産の貸借関係についてのDとの紛争解決のために、

本件第2確約書(注:父の相続財産取得に関する請求人とDの書面の1つ)に

署名した旨申述した点については、請求人は、調査担当職員に対し、

本件各金員の支払理由について、上記紛争解決とともに、

Dに対する離農の補償も申述しているから(原処分関係資料)、

請求人が、本件各金員について、離農補償金ではないと

認識していたことを直ちに推認させるものということはできない。

〇Dは、本件各不動産の処分を巡る請求人とDとの話合いにおいて、

本件各不動産に係る諸経費の清算を主張し、

請求人は、これに応じなかったこと、

請求人は、本件第1金員(注:700万円)を支払った際、

Dから、「但 返済金(内金)」や「但 農業経費代(内金)」と

記載した領収証を受け取らず、「但 離農補償費」と記載された

本件第1領収証を受け取ったことが認められるところ、

このような経緯によれば、請求人は、本件各金員の全てが

離農補償金であると認識していたものの、

本件各不動産に係る諸経費の清算を主張するDに譲歩して、

本件各金員の一部の名目が土地経費及び礼金であると記載されている

本件第1確約書(注:父の相続財産取得に関する請求人とDの書面の1つ)や

その名目が維持管理諸経費であると記載されている本件第2確約書に

合意した可能性があるというべきである。

〇そうすると、請求人が、本件各金員について、離農補償金ではなく、

譲渡費用にならないと認識していたことを直ちに推認させるものと

いうことはできない。

いかがでしょうか?

確かに、問題になった金員は

〇土地の使用貸借の場合、その利用権の経済的価値は、

課税上、零とみるのが相当であるから、貸主である請求人が、

借主であるDに対し、e各土地の返還を受ける目的でe支払金を

支払ったとしても、e支払金は、課税上、e各土地の使用貸借に係る

利用権の譲渡又は消滅の対価と認めることはできない。

〇e各土地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費にも該当しない。

となるので、譲渡所得から控除できないものとなります。

しかし、様々な経緯の中で領収書の名目が別の形式になっていたとしても、

それは「仮装」には当たらない訳です。

最高裁(平成7年4月28日判決)では、

〇重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが

隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りない。

〇過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、

これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。

と判断しています。

秋は税務調査が多い季節でもあり、

重加算税の指摘がされることも多いでしょう。

しかし、それが本当に正しいかどうかは別問題ですので、

納税者が過少申告に至った経緯をきちんと検証する必要があるのです。

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