2016.04.18

短期前払費用の要件

※2014年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

さて、今回は「短期前払費用の要件」ですが、複数の裁決等を取り上げます。

税理士が顧問先への節税提案として、短期前払費用の提案をすること

は多いですが、実は、法令や通達のどこにも書いていないにも関わらず、

実務上は重要な「要件」がいくつかあります。

しかし、これらは法令等に書いていないため、知らないままに提案し、

否認される事例があることも事実で、実際に、国税不服審判所、裁判に

なれば、確実に動く論理です。

最近、支部研修等、税理士向けの研修会の講師を務めた際に出たご質問で

複数の税理士が間違えている事案があったので、ご紹介します。

なお、短期前払費用については、別の角度から9/11、18の

有料メルマガ(月1,000円)でも解説しました。

毎週木曜日配信で、1回あたり200~250円と安価ですので、

是非、お申込み頂き、しっかりと勉強して頂ければと思います。

http://kachiel.jp/service/magextra/

では、本題ですが、短期前払費用の適用対象となる役務の提供は「等質等量」

であることが要件です。

9/18の有料メルマガではこれを題材とし、税理士や弁護士の顧問料は

短期前払費用の対象には「なり得ない」ことを解説しました。

ただし、私が知っているだけでもかなりの多くの税理士が自分の顧問料を

前払いさせ、短期前払費用の取扱いをしていることも事実です。

しかし、「実際に否認されている事例」もあるので、ご注意頂き、

もし、現状で採用されているならば、早めに月払いに戻すべきです。

また、「金額が販管費の一部であり、重要性が乏しいから問題ない」と

考えている税理士もいますが、重要性の原則の論点の前に、そもそもが

等質等量ではないため、短期前払費用には「なり得ない」のです。

これに関する裁決等をご紹介しましょう。

○ 平成19年6月29日 東京地裁

本件通達は、企業としては、前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の

提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ

提供を受けていない役務に対応するもの)はその支出をする時の費用に計上

する経理処理を行っていることが多く、これらについて厳密な期間計算を

行って税務上別個の計算を行う実益を捨ててもさして弊害がないと思われる

ことから、企業におけるこれら期間損益の処理を特例的に是認する取扱い

であると解されるところ、その役務が等量等質のものではない場合には、

時の経過に応じて収益と対応させる必要があることから、本件通達による

特例的取扱いは認められないものと解すべきである。

そこで、本件手数料について検討するに、本件手数料は、Nが原告に対し、

毎日、特殊景品を納入する業務に係る手数料であり、本件委託契約書では、

原告がNに対し、その納入に対する代価を現金で支払うことが約定されて

いるところ、その納入量及び代金額は、日々の業務内容により変動し、

原告及びNにおいて、毎日、あるいは一定期間ごとに、納入を必要とする

特殊景品の数量についての連絡や、その納入確認及び代金計算等が不可欠な

ものと推認されるから、本件手数料をもって前記(1)の等量等質の役務の

対価であると認めることはできない。

○ 平成16年3月24日 裁決

所得税基本通達37―30の2で述べた前払費用とは、

(1)一定の契約に従って継続的に提供を受けること、すなわち、等質等量

のサービスがその契約期間中継続的に提供されること

(2)役務の提供の対価であること、

(3)翌年以降において時の経過に応じて費用化されるものであること、

(4)現実にその対価として支払ったものであること

の4つの要件のすべてを満たす費用と解するのが相当である。

○ TKC税務Q&Aデータベース

前払費用の意義については、法基通2-2-14通達において明らかに

されていますが、更に具体的に述べますと、次のようになります。

(1)一定の契約に従って継続的に提供を受けること、要するに等質等量の

サービスがその契約期間中継続的に提供されること。

(2)役務の提供の対価であること。

(3)翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること。

(4)現実にその対価として支払ったものであること。

以上の要件のすべてを満たす費用が本通達における前払費用に該当すること

となりますので、一定の時期に特定のサービスを受けるためにあらかじめ

支払った対価(例えば、前払い給料、前払い顧問料、翌期に放映される

テレビCM料等)、あるいは物の購入とか生産に対する対価の前払いは

前払金(又は前渡金、手付金)であって前払費用に該当しません。

いかがでしょうか?

先日のセミナーでは「顧問料ではなく、記帳代行料を前払いさせ、

これを短期前払費用として扱っています」という方もいましたが、

これも等質等量には「なり得ません」。

当然ですが、毎月の記帳代行の内容全てが、同じ日付、同じ勘定科目、

同じ金額、同じ摘要欄ということは絶対に無いからです。

私はこの方にも「早めに月払いに戻した方がいい」と提案しました。

このように短期前払費用には、実は色々な論点があるのですが、それが

見過ごされている側面があることの事実です。

たかが短期前払費用、されど短期前払費用です。

自分の顧問料が否認されては、税理士として立つ瀬がありませんので、

ご注意頂ければと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

 

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