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2016.03.09

「裁決は反論の根拠にならないのか?」

※2014年7月配信当時の記事であり、

以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

6月末になって、相談を受けてから半年以上かかっていた2件の税務調査が、更正されずに無事、申告是認で終結することになりました。

そのうちの1件で起こった出来事を紹介します。

調査官の否認指摘に対して、ある公開裁決事例を
反論根拠に提示したところ、調査官からこう言われたのです。

「裁判所がくだした判決であれば課税庁を拘束するので、反論根拠になるのはわかります。しかし、裁決は不服審判所という行政機関がくだした判断ですから、税務署は拘束されませんので、反論の根拠になりませんよ。」

つまり、不服審判所のホームページで公開されている公開裁決は、税務調査における反論根拠として使えないと・・・

さて、ここで勘違いされたくないので、

まず「裁決の拘束力」について説明しましょう。

税務調査で更正された(不利益処分を受けた)
→ 不服申立てをした
→ 不服審判所で裁決により納税者が勝った
→ その処分は取消しになる

http://www.kfs.go.jp/system/faq/44.html

この意味においては、裁決は間違いなく拘束力を持ちます

(行政不服審査法第43条第1項)。

話を戻すと前述の調査官は、判決と違って、裁決は他の事案に影響しない、いわゆる「先例性がない」ということを主張しているわけです。

※判決の拘束力(先例性)については、
「法律に強い税理士になる」(大蔵財務協会 木山泰嗣著)
の100ページ~を参考にしてください。

ここで、国税の内部通達を調べてみました。
短いので、全文を引用しておきます。

※TAINSで検索することができます

「裁決結果の公表基準について(事務運営指針)」
(平成12年9月8日 国税不服審判所長)

標題のことについては、国税不服審判所本部における
公表基準を下記のとおり定めたので、今後、これによられたい。

(趣旨)
国税不服審判所においては、従来より、納税者の正当な
権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の
確保に資するとの観点から、先例となるような裁決について、
固有名詞を匿名にするなど、審査請求人等の秘密保持に
十分配意した上で、裁決結果を公表してきたところであるが、
今般、公表基準の明確化を図ることとしたものである。
       記
1 裁決結果の公表基準
(1)納税者の適正な申告及び納税のために有用であり、
   かつ、先例性があるもの
(2)適正な課税・徴収の実務に資するものであり、
   かつ、先例性があるもの
(3)その他、納税者の正当な権利利益の救済等の観点から
   国税不服審判所長が必要と認めたもの
(注)例えば、次に掲げるものは、上記の基準に該当する。
 ○ 法令又は通達の解釈が他の事案の処理上参考となるもの
 ○ 事実認定が他の事案の処理上参考となるもの
 ○ 類似の事案が多く、争点についての判断が
  他の事案の処理上参考となるもの
 ○ 取消事案等で納税者の主張が認められた事案で先例となるもの
2 ただし、次に該当する場合には公表しない。
(1)審査請求人等が特定されるおそれのあるもの
(2)審査請求人等の営業上の秘密が漏れるおそれのあるもの
(3)その他、審査請求人等の正当な権利利益を
  害するおそれのあるもの

「ほらっ見ろ!」ということで、この文書を
調査官(税務署)に提示しました。

ちょっと古いのですが、2012年5月30日に配信した
記事【 公開の非公開の差とは? 】でも書きましたが、「公開裁決は」先例性があるから公開されているのであって、実質的に課税庁を拘束するものなのです。

税務調査等の反論根拠になりますので、調査官にだまされないようにしてください。

なお、公開裁決の公表基準については、3年前にさらに細かい内部通達が加えられています。

「裁決結果の公表基準の取扱いについて(指示)」
(平成23年3月4日 国税不服審判所長)

「裁決結果及び裁決要旨の公表手続について(事務運営指針)」
(平成23年3月29日 国税不服審判所長)

※TAINSで検索することができます

同じ裁決を探すにしても、まず公開裁決から
探す必要性をご理解いただけたかと思います。
ぜひ、国税不服審判所のサイトで検索をかけてください。
有用な公開裁決が数多くヒットします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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