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2015.05.29

不動産所得と専従者給与の是非

このブログは税理士の見田村元宣が

過去の裁決、判決を中心に是認、否認のポイントを解説していきます。
 

日々の税務判断のご参考にして頂ければと思います。

さて、今回は「不動産所得と専従者給与の是非」です。

まずは、質問です。

顧問先の不動産オーナーから

下記の質問を受けた場合、どのように答えますか?

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先生、私の不動産所得は5,000万円もあるので、

節税したいと思います。

私の妻は賃料などの管理も多少はやっているので、

400万円の青色専従者給与を出したいと思いますが、どうですか?

不動産所得からすれば、金額も多くないので、いいと思うのですが。
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こういう質問を顧問先の不動産オーナーから受けた場合、

多くの税理士は「金額も大きくないし、まあいいか」と

思うのではないでしょうか。

しかし、そもそも青色事業専従者給与は下記性質のものです(裁決文より)。

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青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその青色申告者を

営む事業に従事する者が、当該事業から青色事業専従者給与の届出書に

記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において

支払を受ける給与で、その労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の

程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が

類似するものが支給する給与の状況等に照らしその労務の対価として

相当であると認められるものは、その青色申告者のその給与の支給に

係る年分の当該事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、

当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする旨

規定している。
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さらに、不動産所得は外部の管理会社を付けておけば、

管理業務そのものがあまり発生しないことが大半です。

こういう前提の中で実際に否認された事例があるのです。

この裁決(平成7年5月30日)の前提条件は下記の通りです。

○青色事業専従者給与などを否認された更正後の不動産所得

平成3年分:47,317,094円

平成4年分:60,310,960円

  
○必要経費に算入した青色事業専従者給与の額

平成3年分:4,075,000円

平成4年分:6,930,000円

ちなみに、賃貸不動産の状況は下記の通りです。

○Aビル:4階建、1373.3㎡

○Bビル:6階建、482.65㎡

○駐車場:3ヶ所54台

○貸宅地:129.47㎡

この状況の場合、多くの税理士が「Yes」と言ってしまうかと思いますが、

実際に否認されているのです。

ちなみに、この青色事業専従者は国税不服審判所に対し、

下記の申述をしています。

○1日の労働時間は3~4時間(後で8時間と訂正)で、毎月15、16日

○主な業務内容は駐車場の見回り、賃料の督促、集金、草むしりなど

しかし、「事務量が僅少」という理由で否認されているのです。

不動産所得はそもそもの事務量があまりないことは周知の通りです。

だからといって、事務量が僅少であれば、否認されてしまうことも当然です。

皆さんは税理士として、この事案をどう思われますか?

税理士の感覚からすれば、

○そもそも事務量が少ないのだから、多少でも仕事をしていればOK

○給与額も多額でなく、大きく節税しているのではないのでOK

と考えてしまうかもしれません。

しかし、それは危険な考え方なのです。

なお、今回のメルマガでご紹介した裁決は下記ですので、

1通りお読みになることをお薦めします。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/49/06/index.html

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2012年11月当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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