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2016.07.28

賃貸併用住宅と店舗兼住宅、贈与税の配偶者控除

※2015年6月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

今回は「賃貸併用住宅と店舗兼住宅、贈与税の配偶者控除」ですが、

平成4年10月28日の東京地裁(棄却、確定)を取り上げます。

ビルオーナーが最上階に住んでいる賃貸併用住宅は沢山ありますが、

この場合の評価額について争われた事例です。

まず、具体的な物件(建物、土地)の概要です。

1、東京都港区赤坂3丁目

  鉄筋コンクリート造陸屋根5階建店舗兼居宅

  1階 129.39平方メートル
  2階 130.96平方メートル
  3階 130.96平方メートル
  4階 117.41平方メートル
  5階 91.81平方メートル
 
2、東京都港区赤坂3丁目

  宅地 160.46平方メートル
  

この物件の一部を贈与し、配偶者控除の特例を適用するに際し、納税者は

自用地としての価額から、建物の貸家部分の面積に対応する価額に借家権割合、

借地権割合を加味した価額を控除しました。

なお、論点は相基通21の6-3のただし書きです。

相基通21の6-3
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/11.htm#a-21_6_3

この前提の下、東京地裁は下記と判断しました。

○本件特例を定めた基本通達21の6-3ただし書は、前記第2の1に判示

 したような制度の趣旨及び贈与当事者間の意思解釈から、夫婦間で店舗兼

 住宅等の持分の贈与をし、その持分割合が店舗兼住宅等のうち夫婦双方が

 居住の用に供している部分の割合以下である場合において、贈与を受けた

 持分の割合に対応する当該店舗兼住宅等の部分を居住用不動産に該当する

 ものとして申告があつたときは、当該持分全部について、配偶者控除を

 定めた相続税法21条の6第1項の適用を認めるものとしている。

 この通達の意義は、要するに、当該持分全部について同項の居住用不動産と

 同様に扱うという、いわば擬制を定めたものであるから、居住用不動産の

 範囲について納税者の選択により右通達を適用する以上、その課税価格の

 評価においても、申告のあつた当該受贈持分全体について、居住用不動産

 すなわち自用不動産として評価せざるを得ず、これを現況に即して一部

 賃貸用のものと評価する余地はないものというべきである。

○実質的にみても、配偶者控除の制度は、夫婦間の居住用不動産の贈与に

 ついては、2000万円を限度として非課税を保障し、もつて生存配偶者の

 老後の生活の安定に資するとの立法目的に出たものと解されるところ、一部

 居住用の不動産の持分の贈与を受けた配偶者は、当該居住用部分の全部を

 使用する(民法249条参照)というのが贈与当事者間の通常の意思と

 解されるのであるから、持分全部について自用不動産とみなして2000万円

 の限度で非課税を保障すれば右の立法目的は達成できるのであり、かえつて、

 原告の主張する評価方法を採用すると、居住用部分に関して実質的に非課税

 が保障される額が必要以上に多額になつて不公平な結果になるというべき

 である。

※民法249条(共有物の使用)

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることが

できる。

○これに対し原告は、被告の評価方法を争い、本件土地持分は貸家建付地兼

 自用地として評価すべきであるとして、その根拠を主張するが、以下の

 とおりいずれも採用できない。
  

・まず、原告は、基本通達21の6-3ただし書には、当該不動産を自用地

 として評価する旨の文言は一切書かれていないから、本件土地を、現況から

 離れて自用地として評価することは違法であると主張する。

 しかし、右ただし書の趣旨は、前記のとおり、要するに相続税法21条の6

 第1項をそのまま適用するため、当該不動産を同項にいう居住用不動産と

 みなすということであるから、右のような基本通達の表現は、本件土地に

 ついて現況とは異なつた評価をすることについて何ら妨げとはなるものでは

 ない。

・また、原告の主張するように、確かに、被告の主張するような評価方式を

 採用すると、同一の土地について配偶者と子に同一の持分の贈与を行つた

 場合、双方の持分について評価額が異なることとなり、本件のような自用地

 兼貸家建付地の贈与の事案において、配偶者控除を適用した方が課税価額が

 高くなる場合が生じ、専用の自用地に居住する場合の持分と、ビル5階に

 居住し、その余の部分を賃貸の用を供している場合の持分についての評価が

 同額になりうることとなる。

 しかし、これらは、いずれも納税者の選択により、当該持分を全部居住用

 不動産と擬制したため生じる結果であるから、格別不合理であるとか、

 不公平であるということはできない。

 したがつて、原告のこの主張も採用できない。

ということで、納税者の主張は認められませんでした。

なお、同通達のただし書きが争点となった他の事例として、下記があります。

この事例は「本件土地は、居住用家屋の敷地部分690.85平方メートル、

貸物置の敷地部分32.00平方メートル及び賃貸アパートの敷地部分462.30

平方メートルから構成されている一筆の土地」という前提で、本件土地の

持分贈与に関する配偶者控除が問題になった事例です。

この裁決の中で「相続税法基本通達21の6-3のただし書きは、店舗兼住宅等に

ついて配偶者が持分の贈与を受けた場合には、区分所有権の対象となり得る

場合を除いて、法律上も実際の利用上も明確な分割ないし分離が困難な家屋に

ついて、その居住用部分のみを贈与し、あるいはその全部を使用させると

いうのが贈与当事者間の通常の意思と解されるため、立法趣旨にかんがみ

例外的に認められた取扱いである。」とされています。

「区分所有権の対象となり得る場合を除いて」という点もポイントですので、

覚えておいて頂ければと思います。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/62/25/index.html

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