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2015.09.16

同族会社の行為又は計算の否認

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「同族会社の行為又は計算の否認」です。

伝家の宝刀でもある「同族会社の行為又は計算の否認」ですが、

これが適用されることは多くはありません。

しかし、同族間取引である以上は常にこのリスクはあるので、

注意が必要です。

そこで、今日は所得税法157条が適用されて否認を受けたものの、

納税者が全面的に勝った裁決をご紹介します(平成13年3月13日)。

なお、TAINSコードは F0-1-020 です。

まずは事案の概要をお伝えします。

○請求人Aは個人開業医で、MS法人(B社)に外注費を支払っていた

○業務委託契約書には「電話、受付、来客案内業務補助、電算入力業務、

 請求書・領収書整理、保険請求業務、患者負担分の請求業務、銀行等への

 入出金業務、会計・経理業務等、不動産の管理、車両運転及び管理、

 駐車場管理、院内の営繕、院内の清掃、クリーニング、これらに付帯する

 一切の業務」が定められている

○外注費の金額は平成7年分は34,251,171円※、平成8年分は

 33,020,315円、平成9年分は33,860,000円

 ※34,251,171円にはリース料2,864,358円が

  含まれていることから、外注費の額は31,386,813円

○請負金額はB社が派遣した従業員に係る給与支給金額にAとB社が

 算定した倍率を乗じて計算されている。
 
○原処分庁は比準同業者の人材派遣倍率(比準同業者の派遣した従業員の

 人件費等の額を分母とし、派遣先からの収入金額を分子とした倍率の

 平均値)に給与支給金額を乗じて計算した相当な外注費の額を超えるとし、

 所得税法第157条(同族会社等の行為又は計算の否認)により更正

こういう同族間での報酬の妥当性が問題になることはよくありますが、

これが否認された訳です。

結果として、納税者が勝った訳ですが、審判所の判断は下記の2つが

大きなポイントとなっています。

1、請負業務

○B社から派遣された従業員は派遣先であるAにおいて診療行為を除く

 各種の業務に従事しており、この面に限れば、本件請負業務の内容は、

 一般的な人材派遣の形態であるといえなくはない
 
○しかし、業務委託契約書の第4条及び第5条では、業務に係る費用の

 負担について定めており、B社は本件請負業務を実行するに当たり、

 派遣従業員に係る賃金等以外に賃金等の約3割ないし5割相当の

 水道光熱費、備品消耗品費等の費用を負担している

○これらの実態からみると、B社は診療行為を除くほとんどの業務を

 遂行するために必要な役務の提供及び諸費用の負担を行っている

○このような形態は、一般的な人材派遣にとどまらず、B社がAの

 営む業務全般の委託を受けていると考えるのが相当である

○本件請負業務を単純労働者の人材派遣業務であるとした原処分庁の

 主張は、採用できない

2、比準同業者

○原処分庁は、認定外注費を算定するために比準同業者を採用しているが、

 同業者比準の方法による場合、比準の対象となる割合等の信頼性を担保

 するには、比準同業者と同族法人とに事業内容、事業規模等において、

 類似性が必要

○当審判所が比準同業者4件について、その適否を検討した結果は下記

(事業内容)

・比準同業者の比準内容は従業員を契約先企業等に派遣して収入を得ている

 人材派遣であり、負担する費用も限定されている

・B社の業務内容はAの業務の受託であることから、事業内容において、

 B社と比準同業者には個別条件の相違を超えた違いが認められる

(事業規模等)

・比準同業者はB社とは事業規模等においてかなりの差異が認められる

・比準同業者のうち3件は、収入金額がB社の収入金額の2倍以上であり、

 また、残る1件は人材派遣業のほかに業務委託、マネキン等の紹介業、

 パソコン教室等の業務を行っており、人材派遣に係る収入金額が

 総収入金額に占める割合は、13%ないし17%である

・比準同業者4件は、事業内容、事業規模等において相当な類似性を

 備えているとは認められない

・比準同業者としての基礎的要件に欠けるものから算定した倍率は

 その合理性が認められないことから、この倍率を基礎とする認定外注費に

 比べて、本件外注費は著しく高額とした原処分庁の主張は採用できない

いかがでしょうか?

MS法人に限らず、不動産管理法人なども含め、同族間での報酬が

問題になることはよくあります。

特に、この裁決で注目して頂きたいの「事業内容におけるB社と比準同業者

の違い」です。

同族会社に外注する場合、第三者であれば受託しない(できない)業務を

受託したり、費用負担をすることはよくあります。

しかし、こういう場合に「業務内容の相違」ということが根拠の1つに

なっていることは注目すべき部分です。

また、比準同業者の選定に関しても、裁決の段階で原処分庁の選定の

合理性が否定されることもよくあります。

だから、同族間取引であれ、役員退職金などであれ、

その妥当性が比準同業者との関係で問題になった場合には、

その選定された内容に着目し、①納税者が勝った裁決を提示しながら、

②具体的な書面を以って、反論していくことが大切なことなのです。

私は税務調査の反論をする場合、問題が深くなる可能性を感じたら、

具体的な裁決を記載した抗弁書を「必ず」書きます。

この6月に終わった税務調査でも

○売上除外で重加算税

○修繕費ではなく、資本的支出(1,000万円以上)

という指摘を受けながら、否認されずに終わった事例があります。

この際もA4で2枚の抗弁書を提出しています。

ちなみに、この税務調査の最後のまとめの話し合いの際、

「売上除外、重加算税、資本的支出ではありますが、今回は指導とします」

と言われました。

これは間違いなく、抗弁書の【ある部分】が効いた結果であり、

これがなければ、間違いなくなんらかの否認はされていたものと

推察されます。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

※2013年8月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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