2015.06.11

名義預金と重加算税

今回は「名義預金と重加算税」です。

相続税の税務調査があり、名義預金を否認された場合、

これは重加算税の対象になるでしょうか?

これに関する面白い裁決(平成23年3月23日)を見つけたので、

ご紹介します。

なお、TAINS番号は「F0-3-269」です。

この事案では重加算税が賦課決定されたのですが、審査請求の結果、

納税者の主張が認められ、過少申告加算税となりました。

おおまかな前提条件を記載すると、下記となります。

○ 被相続人と配偶者は平成4年頃から別居、子供らも独立して生活

○ 被相続人は1人暮らしで、財産の管理も自分で行なっていた

○ 被相続人の死亡後、自宅を捜索して、預金通帳などを把握

○ 名義預金には子供の頃の小遣い、社会人になってからの収入も

  含まれていた(一部)

○ 税理士は名義預金は相続財産になる旨を説明しなかった

○ 税理事務所の職員は名義預金の確認をしないまま、

「相続税の申告のためのチェックシート」の名義預金の「検討済」欄に

  チェックをし、申告書を作成

○ 税務調査で名義預金が発覚し、修正申告書を提出し、

  その後、重加算税の賦課決定処分がされた

この状況の中、国税不服審判所はまず、重加算税の法令解釈として、

下記としました。

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重加算税を課すためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、
仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、
隠ぺい又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告が
されたことを要すると解される。

そして、このような重加算税の規定の趣旨からすると、架空名義の利用や
資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは
妥当ではなく、納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく
過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと
解される。
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そして、

1、税務に精通した者でない限り、名義預金は相続財産にならないと

  考えても不自然ではない

2、この名義預金には相続人名義の預金も一部含まれているという認識が

  あったことが推認される

3、税理士が説明しなかったため、名義預金が相続財産になることを

  認識する機会が無かった

4、名義預金を相続財産から外し、相続財産を過少に申告することを意図し、

  その意図が外部からも分かる特段の行動をしたともいえない

とし、重加算税ではなく、過少申告加算税としたのです。

みなさんはこの裁決をどう思われますか?

通常であれば、税理士が名義預金の確認をしないことはあり得ません。

だから、相続人が「名義預金は相続財産になる『知識』」は持つことに

なるでしょう。

しかし、その知識は持ったとしても、どこのに名義預金があるのかすら、

よく分からないことはあります。

そして、本件レベルまでの事案は少ないでしょうが、

○ 被相続人が名義預金も含めた財産の全てを管理しており、

  誰にも触らせない

○ 被相続人の死亡後、相続人が被相続人の机、金庫などを開け、

  何が相続財産なのかを把握するだけでも大変な状況である

○ 税務署の金融機関への反面調査で名義預金が発覚した

ということはあり得る話かと思います。

実際、私も同様の事案に当たったことがあり、

相続人から「これで全てだと思うのですが、これ以上はよく分かりません」

と言われたこともあります。

いかがでしょうか?

相続の税務調査で最も否認されるのは、「現金、預貯金」であり、

名義預金はよく問題になる項目です。

もし、みなさんの事案で同様のことがあれば、

この裁決を思い出して頂き、応用できる部分がないかをご検討ください。

実際、本当に仮装でも隠ぺいでもないのに、

重加算税がかかっていることは多い訳ですから・・・。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2012年11月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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