2015.02.05

商習慣から反論する

今回のテーマは、『商習慣から反論する』です。

(※2011年6月1日 配信メルマガ分)
6月に入り、3月決算に追われる状況から脱出し、
やっと一息ついている方も多いのではないでしょうか。

居酒屋がテナントとして入居している建物に
行った内部造作の減価償却方法について否認指摘を受けた事例から、調査官への反論方法を教えたいと思います。

【税務調査の内容】

この法人は内部造作を「建物附属設備」として
定率法で減価償却していましたが、
調査官は下記を根拠に「建物」だとして否認指摘してきました。

国税庁ホームページの質疑応答事例
「他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法」

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/10.htm

調査官は業種業態を問わず、しかもかなりの数の会社を
税務調査しているのだから、通常行われている取引(商習慣)に
詳しいものだ、と思い込んでいる方が多いのですが・・・
実際には全くの逆です。

調査官はビジネスをしたことがないので、
世の中では当り前の取引であっても全く知らないことが多く、
それが税務上どのような処理をされるのかだけに
関心があるといっても過言ではありません。

税務調査における反論で最も反証力が強いのは、
「商習慣から反論すること」です。
これはよく裁判で述べられる
「社会通念上」という概念に直結します。

上記の税務調査で提出した抗弁書の内容を
そのまま下記に記載します。

社会通念上による解釈
商習慣上、内部造作はそれ自体、建物とは別途売買の対象になっております。
つまり、賃借人が賃貸物件から退去する場合に、他人の建物について行った
内部造作については、次の賃貸人が有償にて内部造作部分を
買い取る取引が行われております。この商習慣を解釈するに、
建物を賃借するのとは別個に、内部造作だけを、
しかも内部造作を行った当事者が売買できるという事実を鑑みるに、
明らかに賃貸借の対象となっている建物とは別個のものと考えざるをえません。

つまり、通常の商習慣=「内部造作は売買対象」となっているため、
社会通念=「(売買対象となっている)内部造作は建物ではない」
という論理で、否認指摘を反論したのです。

今回の事例では、「通常の商習慣=内部造作は売買対象」
という事実を、調査対象会社の取引から
実証することができたので反証能力が高かったです。

しかし、自社で商習慣を証明する必要はありません。
別会社が行っている取引を提示しても構いません。

以前弊社が行ったコンサルティングでは、
印刷業において、印刷過程で出た紙の廃棄物を
子会社の廃棄物処理会社に売買していたのですが、
これが所得移転だと否認指摘された事案がありました。

しかし、紙の廃棄物は「通常の商習慣」として印刷会社が
直接廃棄場に持ち込んで売買するのではないということを、
ある専門誌の記事で見つけ、それを調査官に提示しました。
(昔からそうなっている理由があるのだそうです)

第三者(調査官)から見ればおかしな取引に見えるものも、
専門誌の記事という材料を使うことで、
これが「通常の商習慣」と反証できるのです。
もちろん調査官はこれに反論できるはずもありません。

商習慣から考えて、「だからこれは税務上認められるはずだ」
と反論すれば、税務調査で勝てる確率は一気に上がります。

 

※2011年6月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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