2015.05.08

立証責任の配分

(※2012年8月1日 メルマガ配信分)

さて、税務調査の最盛期を迎えるにあたり、
しっかりと理解していただきたいのが「立証責任」です。

本ブログやセミナーでも繰り返し強調している
ポイントですが、税務調査で否認指摘を受けた場合、
否認指摘内容に関する立証責任、つまり
「なぜ否認になるのかという根拠を調べ、立証するのは
あくまでも調査官側の仕事だ」ということです。

・役員である社長の奥さんに対する役員報酬が、
 勤務実態がないということで否認指摘を受けた

・接待交際費のうち、誰と行ったのかわからない
 支出は個人的支出ということで認定賞与と言われている

・修繕費の内訳が不明確なため、その一部を
 資本的支出として否認指摘された

これらはすべて、調査官に立証責任があります。
調査官が「損金として認めて欲しいのであれば
明確にわかる資料を出してください。資料がなければ
否認とします」と言うのは、立証責任の押し付けにすぎません。

私がこう伝えれば伝えるほど、信じてもらえない
ポイント(理由)が2点あるようです。

①本当なの?

まず、「立証責任が調査官にある」というのは
私個人の見解・主張であって、調査官に伝えても
納得してもらえないのでは?という疑念でしょう。

この点、「立証責任=調査官」というのは
数多くの判決・裁決で述べられているところです。
例えば、最近の裁決を読んでみてください。

「請求人は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した
一部の経費について、不動産賃貸業の遂行上直接必要であった
部分を明らかにしていないことから、当該経費を必要経費に
算入することはできないとした事例」
(平成23年3月25日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/82/05/index.html

審判所の判断のなかに、明確に
「必要経費についての立証責任は、原則として
原処分庁にあると解すべきである」と述べられています。

②じゃあ納税者側に立証責任はないの?

「立証責任が調査官にある」というのは、
上記裁決内容にもあるとおり、あくまでも「原則」です。
もちろん、納税者側に立証責任がある場合もあります。

簡単に説明すると、

納税者が不利な場合=課税庁に立証責任
納税者に有利な場合=納税者に立証責任

となります。上記の裁決でも、
「一般に必要経費は請求人にとって有利な事柄であり」
などとして、納税者に立証責任を配分しました。

税務調査の現場で「通常」納税者に有利なことは
ほとんどないはずです。否認指摘された時点で、
納税者に不利なことばかりです。

ですから、否認根拠を固めるのは税理士の宿題ではなく、
調査官本人の仕事なのです。

立証責任がすべて納税者にあるというのであれば、
税務調査はどうやっても否認指摘をした調査官の勝ちです。
反論・反証されない限り、否認できてしまうのですから、
調査官は数多くの否認指摘をすればいいことになります。
現実的に考えて、こんなことは許されるはずがありません。

立証責任の配分というのは、非常に難しいテーマですが、
ここでわかっていただきたいのは、
「納税者が不利な場合=ほとんどの否認指摘」においては
調査官に立証責任があるということであって、
立証責任を押しつけられたら、明確に
「あなたに立証責任があるんですよ」と
きちんと主張するということなのです。

絶対に対応を間違えないでもらいたいポイントです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2012年8月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

この記事のトラックバックURL
https://kachiel.jp/blog/%e7%ab%8b%e8%a8%bc%e8%b2%ac%e4%bb%bb%e3%81%ae%e9%85%8d%e5%88%86/trackback/

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。