「国税も認める立証責任」
今回のテーマは、「国税も認める立証責任」です。
『質問検査権とその範囲』に関してのセミナーの際に行った、
アンケートを見る限り、やはり多くの税理士が
今まで理解できていない内容だったと実感しました。
特に税務調査においては、「立証責任=国税」
にあるということは衝撃的だったようです。
調査官が否認指摘してきた場合、否認の根拠を立証するのは
あくまでも調査官(税務署側)なのです。
そのために、調査官には(反面調査においても)
“質問検査権”が認められているのです。
実際にあった例ですが、代表取締役の妻が役員となっており、
月に30万円の役員報酬を払っていましたが、
調査官が勤務実態をないことに否認指摘してきました。
社長も税理士も、勤務状況に反論しましたが、
調査官はこう言い放ったのです。
「役員報酬を認めて欲しいなら、奥さんが勤務していた
ということがわかる証拠を出して下さい」
これは確実に間違っています。
調査官が自らの立証責任を放棄し、
納税者側に不当に立証責任を転嫁しているだけなのです。
さて、「立証責任=国税」という事実をいくら
私がお伝えしても、多くの方は「本当に?」と思うようです。
ここで、国税側も「立証責任=国税」と
認めている事実を公表したいと思います。
国税庁のホームページに、税務大学校の研究生による
論文が一部公表されています。
『研究活動 税大論叢について』
http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronso.htm
これは、国税職員が研修のために一定期間
税務大学校に行くのですが、その研修の中で
自らの研究題材を定め、論文を書いているものです。
これらの論文はあくまで、国税職員が研修期間内に
書いたものであって、課税庁としての公式見解では
ないことは当然ですが、しかし、論文の内容を
精査してホームページで公表している限り、
課税庁の見解とは全く違う、ということはないはずです。
これら論文のなかに、”立証責任”に関して
かなり深い考察をしているものが下記になります。
『税務訴訟における立証責任―裁判例の検討を通して―』
http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/50/05/hajimeni.htm
この論文はあくまで「訴訟における立証責任」であって、
税務調査の現場とは違う、と考えてはなりません。
税務調査はもとから、訴訟になることを前提に
実務を行うべきものであり、訴訟では
「立証責任=国税」だけど、税務調査の現場では
「立証責任=納税者」ということはあり得ません。
税務調査では常に、否認する根拠を立証するのは
調査官にあり、それをこちらに押し付けられた際には
絶対に反論しなければならないのです。
※2011年6月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。