『偽りその他不正の行為』の立証責任
※2015年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「『偽りその他不正の行為』の立証責任」ですが、
平成14年2月5日の裁決を取り上げます。
国税通則法第70条において、「偽りその他不正の行為によりその全部
若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を
受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての
更正決定等」は「第一項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、同項各号に
定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。」と
されています。
上記はこの期間につき、争われた事例です。
では、事案の概要ですが、本件は「申述書を提出した事案」であることを
覚えておいてください。
〇請求人は、飲食店業(そば・うどん)を営む者
〇問題になった年は平成7~11年分の5年分(以下、「各年分」という)
〇平成7年分、平成8年分を「前半2年分」という
〇平成9年分、平成10年分、平成11年分を「後半3年分」という
〇平成12年9月6日から10月4日まで税務調査
〇平成12年9月19日:「今回の調査で、誤りを指摘された。今後は、
適正申告に心掛けるので、寛大な措置をお願いする」旨記載した申述書を
原処分庁に提出
〇平成12年10月4日:修正申告書の提出
〇平成12年10月31日:加算税の各賦課決定処分
〇平成12年12月25日に:異議申立て
〇平成13年3月21日:棄却の異議決定
以下、国税不服審判所の判断です。
〇請求人は、前半2年分の所得税について、不正その他偽りの行為がないので、
これに対する過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである旨
主張する。
・国税通則法第65条第5項は、修正申告書の提出があった場合において、
その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該
国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、
同条第1項を適用しない旨規定している。
・一方、国税の更正の期間制限について、国税通則法第70条第1項は、
その更正に係る国税の法定申告期限から3年を経過した日以後においては
することができない旨規定し、また、同条第5項は、「偽りその他不正の
行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた」国税についての更正は、
その更正に係る国税の法定申告期限から7年を経過する日まですることが
できる旨規定している。
・本件各修正申告書は、平成12年10月4日に提出されており、前半2年分に
ついては、それぞれの法定申告期限から3年を経過した日(平成7年分は
平成11年3月16日、平成8年分は平成12年3月16日)以後に提出されたことは
明らかである。
・したがって、前半2年分に係る本件各修正申告書の提出が「更正があるべき
ことを予知してされたものではない」場合に当たらないというためには、
原処分庁において、請求人が前半2年分の所得税につき、「偽りその他不正
の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた」ことの立証がされ
なければならない。
しかしながら、原処分庁からは、この点について具体的主張がなく、
証拠資料の提出もない。
・そうすると、請求人の前半2年分の所得税の更正処分は、それぞれの
法定申告期限から3年を経過した日以後はできないこととなるので、
前半2年分に係る本件修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に
規定する「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に
該当すると認められる。
〇以上により、前半2年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分に
ついては、その全部を取り消すのが相当であり、後半3年分の所得税に
係る重加算税の賦課決定処分については、これを不相当とする理由は
認められない。
いかがでしょうか?
「原処分庁において、~『偽りその他不正の行為によりその全部若しくは
一部の税額を免れた』ことの立証がされなければならない。」という部分が
大きなポイントです。
これに限りませんが、課税庁側に立証責任があるにも関わらず、
これが納税者(税理士)に転嫁されているケースは多々あります。
貸倒損失などを除き、大半の立証責任は課税庁側にあります。
これらが納税者側に転嫁された場合は本裁決などを提示の上、
「適正に」反論していきましょう。
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