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2017.06.09

【最高裁判決、全文掲載】節税目的の養子縁組の是非

※2017年2月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

今回は「【最高裁判決、全文掲載】節税目的の養子縁組の是非」ですが、

平成29年1月31日の最高裁判決を取り上げます。

養子縁組をすることにより、法定相続人の数が増え、

結果として、節税になる場合があります。

これに関して争われたのが、上記裁判ですが、

まずは相続税法、基本通達を確認してみましょう。

相続税法第63条(相続人の数に算入される養子の数の否認)

第十五条第二項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を

同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果

となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての

更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を

当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格(第十九条又は第二十一条

の十四から第二十一条の十八までの規定の適用がある場合には、これらの

規定により相続税の課税価格とみなされた金額)及び相続税額を計算する

ことができる。

相続税基本通達63-1

(相続人の数に算入される養子の数の否認規定の適用範囲)

法第63条の規定が適用される事項は、法第12条第1項第5号の保険金の

非課税限度額、同項第6号の退職手当金等の非課税限度額、法第15条

第1項の遺産に係る基礎控除額及び法第16条の相続税の総額に関する

事項に限られるのであるから留意する。

相続税基本通達63-2

(被相続人の養子のうち一部の者が相続税の不当減少につながるものである場合)

被相続人の養子(法第15条第3項の規定により実子とみなされるものを

除く。)のうちに法第63条の規定による相続税の負担を不当に減少させる

結果となると認められる養子(以下63-2において「不当減少養子」という。)

がある場合には、法第15条第2項に規定する相続人の数に算入する養子の

数は、当該不当減少養子を除いた養子の数を基とするのであるから留意する。

この考え方を踏まえて、以下、最高裁判決の全文です。

(ここから)
主 文

原判決を破棄する。

被上告人らの控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人野原薫の上告受理申立て理由第4について

1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1)被上告人X1は亡Aの長女であり,被上告人X2はAの二女である。

上告人は,平成23年▲月,Aの長男であるBとその妻であるCとの間の

長男として出生した。

Aは,平成24年3月に妻と死別した。

(2)Aは,平成24年4月,B,C及び上告人と共にAの自宅を訪れた

税理士等から,上告人をAの養子とした場合に遺産に係る基礎控除額が

増えることなどによる相続税の節税効果がある旨の説明を受けた。

その後,養子となる上告人の親権者としてB及びCが,養親となる者として

Aが,証人としてAの弟夫婦が,それぞれ署名押印して,養子縁組届に係る

届書が作成され,平成24年▲月▲日,世田谷区長に提出された。

2 本件は,被上告人らが,上告人に対して,本件養子縁組は縁組をする

意思を欠くものであると主張して,その無効確認を求める事案である。

3 原審は,本件養子縁組は専ら相続税の節税のためにされたものである

とした
上で,かかる場合は民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする

意思がないとき」に当たるとして,被上告人らの請求を認容した。

4 しかしながら,民法802条1号の解釈に関する原審の上記判断は

是認することができない。その理由は,次のとおりである。

養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人

となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の

数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて

算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。

相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生

させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の

動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。

したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,

直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組を

する意思がないとき」に当たるとすることはできない。

そして,前記事実関係の下においては,本件養子縁組について,縁組をする

意思がないことをうかがわせる事情はなく,「当事者間に縁組をする

意思がないとき」に当たるとすることはできない。

5 以上によれば,被上告人らの請求を認容した原審の判断には,判決に

影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

そして,以上説示したところによれば,被上告人らの請求は理由がなく,

これを棄却した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却

すべきである。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(ここまで)

いかがでしょうか?

「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,

直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組を

する意思がないとき」に当たるとすることはできない。」という部分に

大きな注目が集まっています。

もちろん、節税目的のためだけに養子縁組をすることはナンセンスです。

しかし、今回の判決が税務実務に大きな影響を与えることは間違いないので、

是非、覚えておいてください。

 

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