【税務署の内部事情】更正の請求が実地調査を誘因する理由
※2021年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
私は年間に数百件の質問・相談を受けますが、
2~3割は税務署の内部事情に絡む内容となっています。
またその中でも、常に一定数の質問・相談があるのは
「更正の請求」に関する内容なので、本メルマガでも
更正の請求の注意点などを何度も取り上げてきました。
今回のメルマガでは、更正の請求の処理方法について、
法人課税部門と個人課税部門の違いを解説します。
更正の請求は税務調査を誘因することになり得ます。
今年3月24日に配信した「還付税額が少額でも
更正の請求をすべきなのか?」でも取り上げましたが、
更正の請求はやぶ蛇になるリスクがあるわけです。
これを法人課税部門と個人課税部門に分けて考えてみます。
まず個人課税部門ですが、原則として
1部門(内部担当)の更正の請求の担当者が
処理・対応しています。事前に担当者が決まっており、
事務年度を通して担当が固定されています。
一方で法人課税部門ですが、こちらは原則として
提出された更正の請求を、各担当の
調査官に割り振られて処理・対応することになります。
この違いは(おそらく)、所得税に関する更正の請求が
事業所得に関する事項が少なく、たとえば
扶養控除の追加や医療費控除の増額など、
直接的に税務調査に関わらない案件が多いからでしょう。
一方で法人課税部門の場合、法人の更正の請求は
収益・損失もしくは税額控除など、どのような内容で
あっても直接的に税務調査に関わる事項である
という違いがあるからです。
この処理・対応の違いから、
●所得税における更正の請求であれば、添付書類などから
還付理由が明らかな案件はすんなり減額更正で処理される
●法人税における更正の請求は、調査官が
「机上で審理するくらいなら実地調査にしよう」
という誘因が強く働く(直近の数年間で
実地調査を実施してない法人は特に)
という違いに至るわけです。
税務調査で経費の追加認容などが明確になった場合、
調査官から「税務調査終了後に更正の請求をしてください」
と言われることもありますが、
●法人における更正の請求は調査担当者が
処理・対応するので何の説明も要らない
という一方で、
●個人における更正の請求を提出すると、
1部門の担当者から連絡があって内容を聞かれる
(税務調査での担当者を伝えないと通らない)
ということが起こるわけです。
以上から、個人における更正の請求よりも、
法人における更正の請求の方がより
税務調査を強く誘因することがわかります。
法人においては特に、安易に更正の請求を
提出すべきではない、ということです。
この点も考慮して更正の請求を検討してください。
なお、更正の請求とは逆に、修正申告が
調査を誘因しにくい理由は下記をご覧ください。
また、更正の請求を提出する際に
留意すべき点は下記を参考にしてください。
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