いつ粉飾と伝えるべきか?
※2014年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
先日、税務調査研究会で実際に出た質問で、
私がいつも回答に困る質問が・・・
「いつ、調査官に粉飾をしていると伝えるべきでしょうか?」
顧問税理士として粉飾の事実はわかっている。
そこで、税務調査の事前通知がある。
「調査に来ても意味ないのに・・・」と内心思う。。
調査官に粉飾の事実を伝えるタイミングは3つ考えられます。
①事前通知の段階
事前通知の段階で「この顧問先は粉飾してますから、
調査に来ても意味ないですよ」と伝えることがあり得ます。
この段階で粉飾の事実を伝えるメリットは、
粉飾を聞いた調査官が、そのまま税務調査を
やめてくれるのではないか!?という願い?でしょう。
私は個人的に、この確率は低いと思います。
なぜなら、調査官側としては調査先の選定をしており、
調査をしないとなると、調査件数を新たに1件
増やさなければなりませんし、また粉飾と電話で言われても、
それが事実がどうかはわかりません。
また、実際に粉飾をしていても、源泉や印紙であれば
所得に関係なく税額が発生する可能性もあるわけです。
こう考えると、調査官は粉飾の事実を知ったうえで
結局は税務調査を実施する可能性が高いというわけです。
②調査開始時点で伝える
私はこれがもっとも有効だと考えています。
なぜなら、こう伝えると調査官としては増差所得は
見込めませんし、調査日数を短くすることも可能です。
例えば、2日間の調査予約の場合、調査開始時点で
粉飾を伝えるのと同時に、「2日間の予定ですが、
粉飾してますから、1日あれば十分ですよね」と交渉可能です。
もちろん粉飾の金額によりますが、ある程度多額であれば
他に誤りがあったとしても、結果は減額更正になるだけですから、
調査を短くして、申告是認で終わった方がいいと
判断する調査官もいるはずです(あくまでも各調査官の
判断によって違うとは思いますが)。
調査に行って、結果として減額更正したい調査官はいません。
③否認指摘が具体的に出そろってから伝える
粉飾の事実を当初から伝えてしまうと、税務署から
「この税理士って杜撰だな・・・」と受け止められる
可能性がありますので、あえて最後まで言わないケース。
税務調査は受けておいて、否認指摘を受け、
増差所得が発生しそうになったら粉飾の事実を伝え、
実際には修正にならないことを伝えることも考えられます。
調査を受けて、何も否認されなければ、粉飾の事実を
伝える必要性もなくなるわけですし、否認されそうになったら
後出しで伝えるわけですから、有効な交渉方法です。
「いつ粉飾決算と伝えるべきか?」という問いに対しては、
明確な答えはないのですが、交渉のやり方としては
②か③がもっとも有効かと思います。
なお、粉飾の事実を伝える場合、税務調査をなくす、
もしくは短くするという以上に、過大納付税額の還付を
受けたいという考えがあるのかもしれません。
しかし、法人税については第129条第2項があるため、
粉飾決算があったからといって過大納税金額の還付をすぐに
受けるというわけにはいきません。最大5年にわたって、
将来発生する納付税額から充当になりますのでご注意を。
さらには、消費税法にはこのような規定がありませんので、
職権の減額更正で、すぐに還付を受けることができます。
伝えるタイミング以前の問題として、キャッシュフローも
考えて、伝えるべきかどうかをまず検討してください。
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