お尋ねを返送すれば調査に来る!?
※2014年6月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
今月で国税の事務年度も終わりになります。国税内は来月(7月)10日に異動があり、中旬~下旬にかけて調査先の選定が行われます。
調査先の選定基準については、過去のブログ等でKSKによる抽出基準などを書いてきましたが、調査官による選定基準は主に「資料せん」との突合にあります。
簡単にいえば、みなさんが提出した資料せんを、申告書など机上で突合をかけてみて、相違があれば「怪しい」として調査先に選ぶわけです。
しかし一方で、資料せんを提出する側の実務家から考えてみると、提出した資料せんと(取引先を含めた)申告書のすべてが合致するなんてことは、あり得ないと思っているわけです。
例えば、仕入をしている取引先との関係を考えると、売上・仕入の計上時期基準が違えば、いくら正しい数字を書いても、ズレてしまうことは明らかなわけです。
「資料せん」と一言でいっても、国税が収集しているものは大きく3つに分けることができます。
(1)国税外部から収集
①法定資料:2~3億枚
法律により提出が義務付けられているもの
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/mokuji.htm
②法定外資料:約1億枚
いわゆる「お尋ね」など
(2)国税内部の収集資料:10億枚以上
法定資料と国税が収集している資料は、納税者側が提出するかしないかをコントロールできないとして、法定外資料については納税者および税理士が「任意」で返送しているものです。
ここで、よくある質問を挙げてみましょう。
「お尋ねに回答しない法人や税理士は狙われませんか?」
→ まったく関係ありません。お尋ねの返送がない法人などは回答の督促対象者とはなりますが、回答がないといって調査先に選定される誘因になりません。
少し複雑ですが、資料せん等の取扱いについて興味がある人は、下記URLから国税内部の事務運営フローをご覧ください(特に4ページ~)。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/topics/data/saitekika/pdf/genkou/19.pdf
このように、お尋ねの回答者をKSKで追っているのではなく、「回答内容をKSKに入力している」のです。
しかも、返送した書類は、各法人等の申告書などと一緒に保管されますから、調査先の選定時に調査官が見ていることになります。
つまりです・・・整理をするとこうなります。
調査官は資料せんを見て調査先を選定
→ 資料せんが多い方が調査に入られやすくなる
→ お尋ねなどもこれに含まれる
よかれと思って返送しているお尋ねが結果として、税務調査に招くトリガーになるというわけです。
私は常に、セミナーや研究会などで「お尋ねは任意なのだから、回答しない方がいい」
と言っています。
こう言うと、「税務行政に反することになる」と反論する税理士も多くいます。
もちろん、お尋ねを返送するかどうかは各自の判断です。しかし、上記のように調査誘因になっていることを知っていれば行動が変わる方も多いはずです。
お尋ねの現実については、ぜひ知っておいてください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。