このスキームを節税とは呼ばない
※2016年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
パナマ文書ではありませんが、節税と租税回避行為を
混同する経営者が多くいるようです。
ここ数年で摘発されている事案は下記のようなものです。
・雇用人数が多い労働集約型の会社
・新規に法人を設立(消費税の免税)
・新規設立法人に従業員を転籍させる
・元の会社に人材を派遣する(業務内容は同じ)
・消費税分が節税?になる
このような相談を顧問先から受けた際に、
どのように回答するでしょうか?
このスキームは、明確に法律に触れているわけでは
ありませんから、「脱税」とは呼べません。
一方で、こんな方法で消費税が免税になる
(一定期間ではあっても)のであれば、
誰でも同じ方法を採用するわけです。
では、逆に考えると、このスキームが否認される
とするなら何が根拠になるのでしょうか?
最終的には、国税による事実認定の問題となりますが、
実態として何ら変わらない中で、外形的には
人材派遣となっているわけですから、「仮装して」
消費税を免れた、として課税されるわけです。
このスキーム自体は明確な法律違反をしていませんが、
「偽りその他不正の行為により、消費税を免れ」た
と認定されれば、摘発の対象となります。
(消費税法第64条が課税根拠)
税務調査に入れば、消費税の課税のみならず、
「仮装」行為ですから重加算税も必至です。
節税が白、脱税が黒とするなら、限りなく
黒に近い租税回避行為と言えるでしょう。
(実質的な法律違反とも解釈できます)
では、外形的には同じような行為であれば
すべてが摘発対象になるのかといえば、
もちろんそうではありません。
別会社を設立して、人材派遣をすることに
「合理的な理由があれば」この限りではありません。
例えば、自社のためだけではなく、同業他社への
人材派遣「も」始める、ということであれば、
人材派遣会社を設立した合理的理由は存在します。
このような例は実際にあって、人材をOJTの中で
こちらで育てておいて、同業者に派遣するビジネスは
需要が大きいですから多くの会社がやっていることです。
逆に言えば、このように明確な「合理的な理由」が
存在しない場合(ほとんどのケースにおいて理由は
消費税を免れることかとは思いますが・・・)、
課税されて当然かと思います。
また、上記のスキームは、消費税の課税(摘発)実績が
多いこともあって、国税側としては前例があることから
税務調査ではかなり強気な課税をしてきます。
節税と租税回避行為・脱税を混同している顧問先には、
上記の違いをきちんと説明してください。
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