この先の税務調査どうなる?
今回は、『実地調査率』がテーマです。
「実地調査率」とは、税務調査が行われる法人(納税者)総数のうち
国税庁の事務年度(7月1日~6月30日までの1年間)に実地調査を行った法人件数の割合のことを言います。
平成18事務年度の実地調査率は、4.9%でした。
これでは、先生の顧問先に税務調査が入る確率も
1年間に1件~2件あるかといったところでしょうね。
しかし、この数字、皆さんは少ないと見ますか?
実は、最近の「実地調査率」からある傾向を読み解くことができるのです。
個人・法人の申告件数は、この20年間で約1.6倍に増加しています。
特に平成17年度は、消費税免税点引き下げや公的年金等控除の見直しなどの税制改正に伴い、申告書提出件数は約300万件へと増加しています。
ところが、その法人に対し調査を行う国税庁の定員は、
平成9年度をピークに減少し続け、同18年度までに1043人も減っています。
税制や租税条約の違いを巧みに利用した国際的租税回避のスキームが巧妙化し、調査が複雑化する一方で調査官の数は減っているのです。
調査先が増えているのに調査官の数は減っている現実。
となれば調査期間を短縮せざるを得なかったワケです。
セミナーでもお話していますが、最近の税務調査が
あっさり終わってきたのはこのためです。
しかしながら、平成19年事務年度には、個人調査1件あたりの
申告漏れ所得金額は965万円と平成3事務年度の1.7倍に増加。
これはFXなどの個人投資家が急増し、無申告者が増加したことに関係します。
また、法人調査においては1件当たりの申告漏れ、不正脱漏所得金額は昭和63事務年度の数値と比べてどちらも1.5倍以上に増加しています。
1件1件の脱税額が大口なものとなっているのも事実です。
こうした打開策として乗り出したが「e-Tax」であり
「内部事務の窓口一本化」なのです。
e-Taxでは、納税者の利便性も図られ、年々利用者も増えています。
職員の事務作業も大幅に削減されました。
内部事務の一元化でも、従来は個人と法人では
税務署内で別々の窓口を回らなければなりませんでした。
現在では、ひとつの窓口で対応できる様になっています。
つまり限られた人数でも個人・法人の区別なく
幅広い業務に対応できるようになるということなのです。
また、国税庁の定員も採用者を大幅に増やし
同19年・20年度では、ようやく全体で純増となってきています。
これに比例して実地調査率も平成15事務年度年に4%を割り込んでいた数値がここ3年で1%以上も急上昇しているのです。
この数字が物語っていること。
それは、いよいよ”税務調査に注力できる体制が整ってきた”ということです。
「適正申告の実現のため、有効な資料情報の収集・分析に努めるとともに申告が適正でないと認められる納税者に対して的確に調査・指導を実施する」
「経済社会の国際化・高度情報化の進展を背景とした分野にも対応する」と国税当局も新たな目標を掲げています。
たかが”4.9%”という数字は、数年後に警鐘を鳴らす大きな意味があるのです。
※2010年5月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
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