この社員は誰?
今回のテーマは『人件費』です。
前回の『銀行調査』の中で、「経営者が家族名義で架空口座を作り、
売上の一部を隠すために、その口座を利用していた」とお話をしました。
今回は、逆に家族を従業員として偽る”人件費の脱税”のお話です。
近年、脱税の手口が巧妙になっているのが、この『人件費』です。
給料、賃金、アルバイトやパート代というのは、会社ごとに
設定している金額が違うため、架空計上がし易い項目でもあるのです。
最も多いのが、アルバイトやパート代を水増したり
架空人物のアルバイト代を計上するケースです。
短期のアルバイトの場合は、社会保険や源泉徴収の義務もなく
当然、役所に従業員に関する書類を提出することもありません。
「外国人労働者へ賃金を支払った」と偽る手口も少なくありません。
外国人労働者の場合、不法就労者も多く、後で所在を確認することは困難です。
アルバイトやパートの場合、毎月の給料が約8万7千円以上になると、
源泉徴収として申告する必要性が出てきます。
つまり毎月8万円であれば、ギリギリセーフの金額となります。
「月8万円のパートが3人います」などは、この数字かなり意識していて、
見ただけで調査官はピンときます。でも意外によくある話なのです。
また、家族や親類と結託して、架空の人件費を作るという方法もあります。
中小企業の場合は、親、親戚などを『非常勤役員』とし、報酬を支払うケース。
経営者の妻を経理として使っているといったものも、よくあります。
非常勤役員の仕事というのは、明確にはわかりません。
経理というポジションも毎日の勤務が必要になるものでもありません。
こういった勤務実態のない親類に対して、突出した報酬が支払われている場合税務調査の際、細かく指摘する項目となります。
その点を経営者に確認すると、「事務所の掃除や整理を行っている」と答え、”出勤簿を確認させて下さい”と尋ねれば、「出勤簿などは、つけていない」と苦し紛れな回答が多くなります。
それらは、まわりから聞き取り調査を行えば、すぐにわかります。
「会ったこともない」「どんな仕事をしているか知らない」
と事情を知らない従業員は、うっかり喋ってしまうものうです。
否認となれば、当然、親類へ支払われた給料は、経営者の賞与として加算し、会社の法人税と経営者の所得税が追徴課税となります。
業務に対して適正な報酬であると説明できれば、全く問題はありません。
しかし、何ら業務らしい業務の実態がない
他の役員と比べてもその報酬額が突出している等、
疑わしきは点は、調査官から厳しい追及を受けることを覚悟して下さい。
※2010年1月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。