2014.10.10

この社員は誰?-その2-

今回も引き続き『人件費』がテーマです。

税務調査における『人件費』のポイントは、主に以下の4つです。

1、タイムカード(出勤簿)、給与台帳などの帳簿類
2、業務日誌などの原始記録
3、不審な人物に対する役所への問い合わせ
4、周辺社員への聞き取り調査

では、これらを詳しく見て参りましょう。

まずは、1のタイムカードなどの帳簿類の確認です。
基本な作業として、まずは厚生年金の加入者一覧表や年金手帳の提出を求めます。

次に、過去1~2年分のタイムカードを全員分集めます。
経営者には、社内の配置図に全社員の氏名を書き出してもらい
普段の仕事の流れ、担当業務など細かく説明を求めます。

こうして、社員をひとりひとり年金手帳やタイムカードと照合していくのです。

この際、タイムカードの押された時間が何名も同じであったり
出勤簿がやたらと奇麗なものは、偽造された可能性が高く追及の対象になります。

2の業務日誌などの原始記録を確認します。

タイムカードなどは、調査に入れば必ず確認する書類です。
細工を施しているかもしれないと、調査官も十分警戒しています。

しかし、業務日誌やお客様名簿は、見られることを想定していませんので
ここから架空の社員の実態を明らにすることもできます。

「営業回りでほとんど会社いない社員A」と経営者から説明受けたものの
日誌にはその行動の記録がない、担当顧客が全く記載されていない
となれば、その存在は疑わしくなります。

ここで不審社員Aを調べるために、3の役所へ問い合わせを行います。

当然、実在している人物であれば住民登録がなされています。
住民税や社会保険料も支払われているハズです。

アルバイトやパートの社員の場合、会社の所在地からかなり遠方に
住んでいるなどは、架空人物ではないか?と疑いの目を向けます。

1、2、3と段階を追って調べてきたが、不正が見つからなかった。
なぜなら経営者が知人などに謝礼を払い、依頼しているケースもあるからです。

そう言った場合は、周囲の社員から聞き取り調査をかけます。
勿論、「営業社員のAさんは、どんな人?」とストレートに聞いたりはしません。

「最近はお忙しいですか?」など適当な世間話から始まり
「飛び込み営業などもするんですか?大変ですね…」
「新規顧客の開拓は?代金の回収は?」と広範囲に会社全体の情報を収集します。

いよいよをもって社員Aの活動実態が無いと確証を得れば、
「架空の人件費を計上してますよね?」と経営者を突き詰めるワケです。

昨今では、手口が巧妙化してきているだけに、調査も厳しくなっています。
小さい企業であれば、タイムカードはおろか業務日誌もない会社もあります。

『人件費』の脱税は、毎年上位に登場する項目だけに、疑いの目を
向けられぬように以上のポイントには十分に注意を払って下さい。

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