その売上計上もれは重加算税か?
今回は「その売上計上もれは重加算税か?」です。
今日の話は、ある税理士さんの顧問先で実際に起き、
私が「税務相互相談会」の中でご相談を受けた実例です。その税理士さんの顧問先に税務調査があり、売上計上もれが発見されました。
しかし、それは意図的なものではなく、
1、現金 / 売上 (現場での売上)
2、預金 / 現金 (現金の預入れ)
と処理すべきところ、1の処理がもれただけのことでした。もちろん、現場での現金売上帳には記帳されています。そして、毎日の売上は適正に1、2の流れで処理しているけれども、年数回のみ、1を忘れたミスがあったという状況です。これに対し、税務調査官は「売上計上もれで重加算税」と主張してきました。
さあ、みなさんは、こんな時はどう反論しますか?
このご相談を頂いた時、私は「下記裁決(平成14年4月25日)を提示して反論してください」とお伝えしました。ちなみに、TAINS番号は「F0-2-114」です。現金売上があるビジネスでは同様の事例は十分にあり得るので、今日の裁決は深く記憶に刻んでおいて頂ければと思います。まずは、前提条件、双方の主張、国税不服審判所の裁決という流れをみましょう。
1、前提条件
○ A社からの入金につき、「雑収入」とすべき入金を「現金」と処理
→ A社との取引は以前はあったが、ここ2年間は無かった
→ 以前の取引時は「雑収入」で処理していた
○ 元帳の摘要欄には「A社より」と記載されていた
○ 税務調査で「重加算税」と言われ、争いになった
2、納税者の主張
○ 税務調査があって、このミスに気付いた
○ 取引が2年間も空いたため、ミスしてしまった
○ 経理担当者の知識不足によるもので、意図的ではない
3、税務署の主張
○ 以前は適正に処理していたので、意図的である
○ 重加算税の対象になる
4、国税不服審判所の裁決)
○ 摘要欄に「A社より」と記載しているので、意図的ではない
○ 重加算税はかからない
私がご相談頂いた事例ではこの裁決を提示して交渉した結果「あっさりと」重加算税はなくなったそうです。当然ですが、重加算税は隠ぺい、仮装が前提ですし、もし、現金売上を除外するならば、現金売上帳に記入なんてしませんし預金に預入れなんて絶対にしない訳です。しかも、ミスは年数回のみという状況です。今回の事例も上記の裁決も「帳簿には記載があるが、単なる処理ミス」という点で同じです。
こういう「ミス」に対して重加算税がかかることはおかしいのです。さらに、課税庁側の「隠ぺい、仮装」の立証責任を問い納税者が勝った裁決(平成9年12月9日)もあります。
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重加算税の賦課要件を充足するためには、
過少申告行為とは別に隠ぺい又は仮装と評価すべき行為の存在を
必要としているものであると解される。
これを本件についてみると、原処分庁の主張は、
請求人が意識的な過少申告を行ったものであるというにすぎず、
隠ぺい又は仮装であると評価すべき行為の存在について
何らの主張及び立証をしておらず、
また、当審判所の調査その他本件に関する全資料をもってしても、
本件貸付金について隠ぺい又は仮装の事実を認めることはできない。
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みなさんはこれら2つの裁決をどう思われますか?
税務調査の現場では本来は重加算税にならないものに「重加算税です」と言われることがよくあります。しかし、それは単なるミスであることも多く、重加算税の対象になり得ないものも多いのです。もし、みなさんの顧問先で同様の事例があった場合、これらの裁決を提示し、交渉してくださいね。過去の納税者が更正され、争い、そして、勝った貴重な事例ですから。
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2012年11月当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。