クルーザーはNGで、フェラーリはOKである理由
※2017年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「クルーザーはNGで、フェラーリはOKである理由」ですが、
平成7年10月12日の裁決を取り上げます。
この事例は「クルーザーはNG、フェラーリはOK」とされた事例ですが、
その判断を分けたのは「納税者の記録、状況、立証」です。
〇クルーザーの概要、NGである理由
・総トン数8.5トン、最大搭載人員12名のプレジャーモーターボート
・購入金額:26,500,000円
・本件船舶は、燃料を給油した事実は認められるが、船員法上
航海日誌の記録の義務はなく、請求人も本件船舶を運航した実績を
記録していないことが認められ、当審判所の調査に当たっても、
いつ、だれを、どのような目的で乗船させ運航したかの説明はないので、
本件船舶を請求人の事業の用に供したかどうかを確認することはできない。
・請求人は、従業員の福利厚生の一環としても本件船舶を使用した旨
主張するが、本件船舶を福利厚生の一環として使用した実績を記録
しておらず、また、従業員の福利厚生のための資産としての本件船舶の
利用規定等の定めもないことが認められる。
・このようなことからみると、本件船舶が従業員の福利厚生のための
資産として、全従業員が公平に使用できる状況にあるとは認められず、
また、従業員の福利厚生の一環として使用された事実も確認することは
できないので、本件船舶が福利厚生の一環として使用されたとは
認められない。
・本件船舶を請求人の事業の用以外の用に供した場合の使用料を請求人の
収益に計上している事実も認められない。
・請求人は、本件船舶を取引金融機関上層部の接待や従業員の福利厚生の
一環として使用したとする主張を認めるに足りる証拠を提出せず、
また、当審判所の調査その他当審判所に提出された証拠資料等を
もってしてもこれを認めることはできないから、本件船舶が請求人の
事業の用に供されたものと認めることはできない。
〇フェラーリの概要、OKである理由
・2人乗り、排気量4.94リットル
・購入金額:27,000,000円で取得
・請求人は、本件車両を■■■■の通勤及び支店を巡回指導する際の
交通手段として使用するなど請求人の事業の用に供している旨主張する。
本件車両の車検記録を調査したところ、本件車両を取得してから
3年間に7,598キロメートル走行していることが認められ、
また、■■■■に対する旅費及び通勤手当の支給状況をみると
交通費及び通勤手当は支給されておらず、本件車両を請求人の
事業の用に使用したものと推認することができる。
・原処分庁は、本件車両は事業の用に供された実績が明らかでなく、
イタリア製の高級スポーツカーで一般社会常識から見ても個人的趣味の
範囲内のものであり、同族会社ゆえにできる行為であると主張する。
・しかしながら、本件車両が、主として使用する■■■■の個人的趣味に
よって選定された外国製のスポーツカータイプの乗用車であるとしても、
前記のとおり現実に請求人の事業の用に使用されていることが推認
できる以上は、原処分庁の主張を採用することはできない。
・本件車両は、請求人の事業の用に供されたことが推認できること、
また、■■■が請求人とは別に外国製の車両3台を個人的に所有
しており、請求人の減価償却資産とはしていないことを併せ考えると、
請求人が本件車両を請求人の資産として計上していることを不相当
とする理由は認められない。
税理士がクルーザーなどに関する相談を受けた場合、
「運行記録簿をつけましょう」というアドバイスをすることが多いでしょう。
もちろん、それは上記裁決の通り、絶対条件ではないのですが、
金額も大きいことから、税務調査で指摘される可能性も高いため、
「納税者側の立証」を保全できるようにしておきましょう。
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