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2016.11.07

コンピューターのデータによる推計

※2016年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「コンピューターのデータによる推計」ですが、

平成15年2月19日の裁決を取り上げます。

税務調査があり、様々な資料から推計がされることがありますが、

その合理性が問われることもあります。

本裁決は一部取消しなので、納税者の主張が認められなかった部分も

あるのですが、納税者の主張が認められた部分を中心に解説します。

まずは、基礎事実ですが、請求人の業種は運転代行業です。

イ 請求人は、平成9年3月課税期間及び平成10年3月課税期間(以下

「本件各決定課税期間」という。)においては、消費税法第9条《小規模

事業者に係る納税義務の免除》の規定により消費税の納税義務が免除される

事業者(以下「免税事業者」という。)に当たるとして、消費税等に係る

経理方法は、本件各決定課税期間のいずれにおいても税込み経理を採用して

いる。
      
また、平成11年3月課税期間の消費税等に係る経理方法は、期中において

は税込み経理により記帳し、期末において一括税抜き処理をしている。

ロ 請求人が本件各事業年度の法人税の確定申告書に添付した決算書には、

売上高、従業員給与手当及び燃料費(営業車両のガソリン代をいう。以下

同じ。)について、別表4の「確定申告額」欄のとおり記載されており、

その税込み金額は、同表の「税込み申告額」欄記載の金額となる(以下に

記載する金額は、消費税が課されない取引及び特に税抜き金額である旨記載

した場合を除き、消費税込みの金額とする。)。
      
また、原処分に係る異議決定後のこれらの金額は、同表の「原処分庁認定額」

欄記載の金額となる。

ハ 請求人は、本件各決定課税期間について、消費税法第9条第4項に規定

する「消費税課税事業者選択届出書」を提出していない。

ニ ■■地方法務局の登記簿の謄本によれば、本件各事業年度における

請求人の代表取締役は、平成10年6月1日前が■■■であり、同日以後が

同人の妻■■■■である(以下、両者を併せて「■■■■ら」という。)。

ホ 請求人の資本金は10,000,000円であり、その株主の持株割合

は、■■■60%、■■■■40%である。

また、本件各事業年度において、請求人の株主及びその出資割合に異動は

ない。

ヘ 別表9の■■■名義の普通預金口座のうち、■■銀行■■■支店(現

■■■銀行■■■支店)の預金口座(口座番号■■■)は、競艇に電話投票

するための専用口座として平成6年7月6日に開設されたものであり、

■■■■銀行■■支店(現■■■銀行■■■■支店)の預金口座(口座番号

■■■■)は、競輪に電話投票するための専用口座として平成7年8月8日

に開設されたものである。

これを踏まえて、国税不服審判所の裁決です。
  

まずは、法人税についてです。

B 平成10年3月期

〇原処分庁は、平成10年3月期の諸経費等データファイルの数値を基礎

として同期の所得金額を推計し、法人税の更正処分をしているところ、

推計を要すると判断した根拠については、当該データファイル及び駐車場

収入集計表ファイルに請求人の帳簿の記載を上回る収入金額及び燃料費の

記録があること以外、具体的に明らかにしていない。

〇しかしながら、平成10年3月期の諸経費等データファイルは、平成11年

3月期の諸経費等データファイルとは異なり、代行収入、駐車場収入及び

雑収入等の区別がなく、これに記録された平成9年4月から同年7月までの

4か月分の燃料費の額(平均731,311円)は、給油先■■■■■■■

■■■■に保存されている同年8月以降の給油記録(平均321,544円)

とまったく異なる数値であるから、平成10年3月期の諸経費等データファ

イルの数値は信ぴょう性に乏しく、当該データファイルの数値を基礎として

同期の所得金額を推計することは、合理的でないといわざるを得ない。

〇さらに、請求人の代行収入金額と密接な関係があると解される営業車両の

台数は、平成10年3月期が13台、平成11年3月期が14台であり、

■■■■■■■■■■■に保存されている給油記録に係る燃料費の1か月

当たりの平均額は、平成10年3月期が321,544円、平成11年

3月期が382,632円であって、いずれも平成11年3月期の数値が

平成10年3月期の数値を上回っていることから、このような場合、

一般的には、上記の車両台数及び燃料費の額の比較から、平成11年3月期

の売上高が平成10年3月期のそれを上回るとの推定が働くものと解される

ところ、原処分庁が、平成10年3月期の諸経費等データファイルの数値を

基礎として推計した同期の売上高120,657,800円(別表4の

「原処分庁認定額」欄の金額)は、平成11年3月期の諸経費等データ

ファイルに基づく売上高80,541,571円を大きく上回り、上記

推定とはまったく異なる結果となっている。

〇以上に照らし判断すると、■■■■が、本件調査の際、代行業務の受付

状況を記載したと思しき大学ノートを持ち去りその後においてこれを提示

しなかったこと、請求人が、代行収入等の申告漏れを認め本件修正申告を

したこと及び請求人の申告に係る平成11年3月期の収入金額は、実際の

収入金額を下回るものであったと認められることなどからすれば、

請求人の平成10年3月期以前の申告についても、代行収入等の申告漏れが

想定されないわけではない。

しかしながら、平成10年3月期の諸経費等データファイルの記録は、

請求人の帳簿の記載以上の信ぴょう性を有するものとは認められず、

原処分庁が、請求人の所得金額の計算について推計を要するとした根拠は、

その前提を失うというべきであるから、同期の法人税に係る更正処分は、

その全部を取り消すのが相当である。

次に、消費税についてです。

ロ 免税事業者か否かについて

請求人が、本件各決定課税期間において、免税事業者に該当するか否かに

争いがあるので、以下審理する。

〇消費税法第9条第1項は、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間

における課税売上高が3千万円以下である者については、消費税を納める

義務を免除する旨規定している。

したがって、請求人が、本件各決定課税期間において、免税事業者に当たる

というためには、平成7年3月課税期間及び平成8年3月課税期間の課税

売上高が、それぞれ3千万円以下であるか否かにより判断すべきこととなり、

この点が、本件の直接の争点である。

〇この点について、原処分庁は、平成7年3月課税期間については、請求人

名義の普通預金口座の現金入金額の累計額47,474,058円が、また、

平成8年3月課税期間については、売上高29,955,300円に■■■

名義の普通預金口座の現金入金額の累計額7,906,000円を加算した

金額37,861,300円が、それぞれの課税期間に係る課税売上高である

旨主張する。

〇確かに、請求人が、平成11年3月期の法人税に係る代行収入等を過少に

申告していたこと及び■■■■が代行業務の受付状況を記載したと思しき

大学ノートを持ち去り、その後においてこれを提示しなかったことなどから

すれば、原処分庁が、平成11年3月課税期間はもとより、これ以前の

各課税期間の申告に係る課税売上高の信ぴょう性に疑念を抱くことは当然と

いうべきである。

しかしながら、この点については、少なくとも、平成7年3月課税期間

及び平成8年3月課税期間の決算書に記載された課税売上高が過少である

ことを証する具体的事由が明らかでない限り、単なる預金口座の現金

入金額が、課税売上高に当たるということはできないから、原処分庁が、

本件データファイルに関する主張以外、その主張を首肯するに足る具体的

事由を明らかにせず、当審判所の調査の結果によっても、請求人の平成

7年3月課税期間及び平成8年3月課税期間の決算書に記載された課税

売上高が過少であると認めるに足る証拠が認められない以上、請求人名義

及び■■■名義の各普通預金口座の現金入金額が請求人の課税売上げに

該当するということはできない。

いかがでしょうか?

私も様々な事案の相談を受ける中で、その推計の根拠はいかがなものか?と

首をかしげるケースも少なくありません。

「推計課税の合理性」というものには明確な基準が無いだけに、課税庁側も

強引な対応をする可能性があるので、そこは税理士が毅然とした態度で、

対応をするべきなのです。

 

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