サブリースの料率の限界点は?
※2016年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「サブリースの料率の限界点は?」ですが、
裁決等ではなく、「実際の税賠事例」を取り上げます。
まずは、「税理士職業賠償責任保険事故事例」(2013年版)から
一部を抜粋します。
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・所得税につき、個人所有の賃貸建物を同族会社にサブリースしたところ、
同族会社が受け取る管理料相当額が「著しく高額」として同族会社の
行為計算の否認により更正処分を受けた。
・これにより更正による追徴税額につき、損害が発生し、
損害賠償請求を受けた。
・依頼者は、個人所有の賃貸建物を同族会社にサブリースする場合、
その賃料について税理士に相談したところ、税理士から「同族会社に
支払える不動産管理手数料は20%が税務上の限界」とのアドバイスを
受け、これに基づいて賃料を決め申告を行った。
・しかし、その後の税務調査で同族会社が受け取る管理料相当額が
「著しく高額」として同族会社の行為計算の否認により更正処分を受けた。
・本件は、結果として更正処分を認めており、追徴税額は「本来納付
すべき税額」となるため、保険金支払いの対象外であると判断された。※
※見田村注:多くの方が誤解されていますが、税理士職業賠償責任保険が
下りるのは、過大納付となっているが、その還付が不可能である場合のみです。
追徴税額が発生する場合は「対象外」です。
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この税理士の「不動産管理手数料は20%が税務上の限界」という
アドバイスがおかしいとは「全く」思いません。
国税の「著しく高額」という主張についても、「著しく」とは思いません。
20%の料率でも実際に否認されていない事例は多々あるでしょう。
しかし、この事例から言えることは下記です。
○20%は国税が更正できる料率である。
○顧問先に説明する際、20%はリスクがある料率である旨を
伝えておくことが必要。
○「20%くらいなら大丈夫でしょう」と答えた場合、上記の税理士と
同様の状況に陥る可能性がある。
もちろん、審査請求等に至った場合は違った結果になるかもしれません。
しかし、この事例のように納税者が更正処分を認めてしまっては、
税理士としては何ともできないのです。
今、福岡の税理士法人がDESに関して3億円超の損害賠償請求を受け、
東京高裁で争っていますが、これも「リスクの説明責任」が
大きな問題となっています。
だから、 皆さんは
「1%でも否認リスクがある場合、否認の『可能性』を伝えておくこと」
が重要なのです。
しかし、多くの場合、【個人的な感覚】をベースに
「それくらいなら大丈夫でしょう」と答えていることも多いでしょう。
それは大変、怖いことなのです・・・。