一筆の統一形式とその要件
こんにちは。元国税調査官の久保憂希也です。
「質問てん末書」「聴取書」「申述書」・・・
税務調査の現場では、様々な名称で呼ばれている、
いわゆる「一筆入れる文書」の名前(タイトル)です。
税務調査の手続き改正にともない、税務署も
(今更ながら)適正な手続きを踏むことの重要性を
認識しており、去年6月に出した内部通達がこれです。
「質問応答記録書作成の手引について(情報)」
国税庁 課税総括課情報 第3号 平成25年6月26日
※TAINSで「質問応答記録書作成の手引」
で検索すれば、見ることができます。
また、こちらでも一部抜粋の記事を読むことができます。
http://www.lotus21.co.jp/ta/1310hogs/520_04.pdf
この内部通達を読むと、今までバラバラであった
いわゆる「一筆」が「質問応答記録書」で
名称の統一をはかるとともに、具体的な運用内容が
明示されることになりました。
実務上知っておくべきことを整理しておきましょう。
【作成要件】
「質問応答記録書」はどのような場合に作成するのか?
・納税者の回答そのものが直接証拠となる場合
・直接証拠がないため、納税者の回答が立証の
柱として更正決定等をすべき場合
つまり、納税者の発言が重要な否認根拠になる
ような場合に作成する、と規定されています。
具体的には、
・役員や外注先が役務提供の実態がないにもかかわらず
支払いが行われているような場合
・名義預金(口座の管理実態など)
のように、事実認定しなければ否認できない場合に
作成するものと規定されているのです。
この点、事実認定が必要もないのに、調査現場では
「質問応答記録書」をとりたがる調査官も多いようですが、
その必要性の有無を問うべきでしょう。
(ただし更正の可能性がある場合を除く)
さて、ここでもっとも大事な問題は、
税務調査において、上記の必要性が実際にあった場合、
作成された「質問応答記録書」に署名・捺印を
しなければならないのかどうかです。
内部通達に載っている質疑応答を(一部ですが)
そのまま転記しておきます。
【署名押印の必要性】
回答者が署名押印を拒否した場合は、どのようにすればよいのか
(答)
読み上げ・提示の後、回答者から回答内容に誤りがないことを
確認した上で、その旨を証するため、末尾に「回答者」と
表記した右横のスペースに回答者の署名押印を求めることとなるが、
署名押印は回答者の任意で行うべきものであり、これを
強要していると受け止められないよう留意する。
したがって、回答者が署名押印を拒否した場合には、
署名押印欄を予定していた箇所を空欄のまま置いておき、
奥書で、回答者が署名押印を拒否した旨(本人が拒否理由を
述べる場合にはそれも附記する)を記載し、また、回答者が
署名押印を拒否したものの、記載内容に誤りがないことを
認めた場合にはその旨を記載する。
ここに明記されている通り、調査官から「質問応答記録書」に
署名押印を求められても「断ることができる」のです。
なお、同じ質疑応答集の中には、
「税理士への署名押印は不要」とされています。
この場合、断り方をよく聞かれるのですが、
これは非常に簡単です。
「これは任意の文書(正確には、行政文書)ですよね?
であれば、署名押印しなければならないという
義務(法律的根拠)はありませんので署名押印しません」
任意文書であっても、調査官の要求を断ることに対して、
「何か悪いことをしているのではないか?」
と感じる税理士も多いように思いますが、
実際のところは国税の内部通達でもこのように
「拒否する」ことを認めているのです。
私が常に言い続けている通り、一筆入れることは
納税者が不利になることしかないのです。
「質問応答記録書」への署名押印を求められても、
上記の通り主張し、断ればいいのです。
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※2014年3月の当時の記事であり、
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