不動産の贈与と登記した日
さて、今回は「不動産の贈与と登記した日」です。
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不動産の贈与契約書を交わした後、登記するまでに年数が経ってしまった。
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もちろん、これが租税回避を目的とし、登記を意図的に遅らせたものならば、否認されても仕方がありません(昭和60年3月25日裁決等)。
しかし、年数が相当経ったにも関わらず、納税者が勝った事例があるので、ご紹介します。
具体的な内容の前に相続税基本通達を確認します。
(財産取得の時期の原則)
1の3・1の4共-8 相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。
(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時(財産取得の時期の特例)
1の3・1の4共-11 所有権等の移転の登記又は登録の目的となる財産について
1の3・1の4共-8の(2)の取扱いにより贈与の時期を判定する場合において、その贈与の時期が明確でないときは、特に反証のない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして取り扱うものとする。
ただし、鉱業権の贈与については、鉱業原簿に登録した日に贈与が
あったものとして取り扱うものとする。
では、具体的な判決(那覇地裁(平成7年9月27日、確定))を挙げ、
みていきましょう。
なお、TAINS番号は「Z213‐7581」です。
まずは、前提条件です。
○ 昭和41年5日8日付けで土地の贈与に関する覚書あり
→ 贈与者は長男、受贈者は三男
→ 本土復帰前の琉球政府時代の収入印紙が貼付
→ 贈与された土地の分筆は昭和60年11月22日
○ 三男はその土地に自宅を建築
○ 平成2年2月9日に登記(登記原因:昭和41年5日8日の贈与)
○ 平成2年分の贈与税、無申告加算税の決定処分がされた
この前提の中、那覇地裁は
○ 本件贈与の直接証拠である覚書の信用性に問題はない
→ 昭和41年5月8日付けでそのころ作成されたものと認められる
○ 分筆以前からブロックを積み、贈与された範囲を明確にして占有している
○ 名義変更が遅れた理由は下記事情による
・ 名義変更するためには、測量と分筆をする必要があったこと
・ 建物の建築について融資を受けるには、新築後に抵当権を本件建物に設定するだけで足りたこと
・ 次男が贈与を受けていないのに、三男が贈与を受けて登記をすることがはばかられた
○ 本土復帰前の沖縄には贈与税の制度はなく、贈与による財産の取得は、所得税の一時所得の適用であったが、課税実績がほとんどなかった
○ 昭和41年当時、贈与により財産を取得したことによる納税意識は
一般的に低かったと推認されるので、本件贈与当時に移転登記を
直ちに行わなかったことに、租税回避の意図を認めることはできない結果として、納税者の主張が認められたのです。
もちろん、贈与した後に合理的な理由もなく、租税回避の目的で登記日を遅らせた場合は否認されます。
しかし、特殊事情があるとはいえ、納税者の主張が認められた意味は
大きいと考えますが、年数が経った場合は「登記した日=贈与した日」
という考え方があることも事実です。
ただし、そこに合理的理由があれば、納税者の主張が認められることも
あるということです。
これを租税回避的に使うことはできませんが、貴重な事例なので、
覚えておいて頂ければと思います。
(見田村 元宣)
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2013年5月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。