不動産を購入した場合の按分計算の盲点(その1)
※2017年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「不動産を購入した場合の按分計算の盲点(その1)」ですが、
平成12年12月28日の裁決を取り上げます。
なお、今回の裁決は数年前のセミナーで解説したこともあるので、
「あー、あれか!」と思われる方もいるかもしれません。
ただし、【新しい論点】も含め、来週の「その2」で解説しますので、
必ずお読み頂ければと思います。
まずは、今回の事例の物件概要です(別棟のマンション3室)。
〇 Eマンション306号室
・ 所在:P市Q町
・ 新築年月日:平成6年3月21日
・ 取得年月日:平成6年4月25日
・ 取得価額:1,480万円
〇 Fマンション703号室
・ 所在:P市R町
・ 新築年月日:平成2年3月31日
・ 取得年月日:平成6年4月28日
・ 取得価額:1,150万円
〇 Gマンション805号室
・ 所在:P市S町
・ 新築年月日:昭和63年2月25日
・ 取得年月日:平成6年5月24日
・ 取得価額:1,030万円
ここで請求人は「建物本体及び建物附属設備は区分して減価償却費の
計算をする必要があるので、同業他社の資料を基に建物附属設備部分を
30%として計算」しました。
しかし、国税は「請求人から提示があった売買契約書等からでは
建物本体及び建物附属設備の価額が明確に区分できなかったので、
やむを得ず、建物附属設備の価額を建物本体の価額に含めたところで
減価償却費を計算」と主張したのです。
そして、国税不服審判所は下記と判断したのです。
〇 鉄筋鉄骨造りのマンションの場合には、建物本体及び建物附属設備の
減価償却費の計算は、それぞれ別個の耐用年数により計算する必要がある。
〇 購入した建物本体及び建物附属設備については、それぞれの購入代価等が
売買契約書等で区分して明らかにされている場合は、その区分されている
ところの購入代価等によることとなるが、その購入代価等が区分して
明らかにされていない場合には、建物の取得価額を合理的な方法により
建物本体及び建物附属設備に区分計算する必要がある。
〇 そこで、合理的な方法で建物の取得価額を建物本体及び建物附属設備に
区分する必要があるが、請求人が主張する同業他社の物件から見積もった
建物本体及び建物附属設備の価額の割合による方法も合理性のある方法と
認められる。
〇しかしながら、本件物件は、本件物件の建築主が保存する工事請負契約書
から建物本体及び建物附属設備のそれぞれの工事費の割合が算出でき、
これを不相当とする理由は認められないから、請求人が主張する他の物件等の
資料に基づき計算する方法より、本件物件の建築工事に係る資料に基づき
計算される工事費の割合による方法がより合理的と認められる。
結果として、「土地、建物、建物附属設備に按分すべき」という
納税者の「考え方」は認められました。
しかし、工事請負契約書の実額が分かることから、
実学ベースでの按分計算となったのです。
いかがでしょうか?
法人であれ、個人であれ、不動産を購入した場合、
これが「土地」、「建物」、「建物附属設備」に分けられておらず、
「土地」と「建物」にしか按分されていないケースは非常に多いと考えます。
しかし、それは「必要」である計算がされておらず、
納税者不利となってしまっているのです。
ただし、新築であれ、中古であれ、納税者が購入物件の工事請負契約書を
見ることはほぼ不可能ですが、こう判断されていることも事実です。
特に、新築物件に関しては「原価を見せろ」と言っているのと
変わりませんから、そんなことは不可能でしょう。
では、実務的にはどうしたら、いいのか?
それは来週の「その2」で【別の考え方】も示した上で総括しますので、
次回をお待ち頂ければと思います。
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