不動産取引に伴う交際費と重加算税
※2014年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「不動産取引に伴う交際費と重加算税」ですが、
平成22年4月20日の裁決を取り上げます。
不動産取引には何かと問題のあるい取引も多いですが、
今回の事例は下記の状況となっていました。
○ 請求人は一般土木建築工事業を営む法人
○ 転売した土地を購入する際に、売買契約書の記載された金額とは別口で
売主A社の会長個人から売買代金の値上げを要求され、個人に支払った
○ 請求人は「商品土地仕入高」勘定に計上し、摘要欄も記載(摘要欄の
記載内容は伏字)
○ 原処分庁は別口で支払われた代金は架空計上として更正し、重加算税も
賦課決定した
争点はこの代金は損金か否か?(争点1)、重加算税の対象か否か?(争点2)
という2点です。
そして、審判所は下記と判断しました。
(争点1について)
○ 売上原価への該当性
本件別口金により支払われた■■■■■■は、本件売買契約の代金とは
別の性格の資金として用意され、■■■の会長と称される■■■■に
支払われたものの、請求人の■■■に対する本件売買契約上の何らかの
債務を消滅させるための支払とは認められず、少なくとも本件土地等の
売買代金すなわち売上原価とみることはできない。
○ 売上原価以外の費用への該当性(本件別口金により支払われた■■■■■
■の支払目的等)
請求人及び■■■■としては、本件売買契約に際し■■■の会長と称され
る■■■■から追加的に■■■■■■の支払を要求されたものであったと
しても、そのような要求に応じるべき本件売買契約上の債務はなかったが、
上記C及びDのとおり、■■■■を本件売買契約に関与し得る立場にある
■■■の関係者と認識して、その要求に応じないことによって本件売買
契約が不成立となれば本件土地を転売することにより得られるはずの利益
が得られなくなることから、そのような事態になることを危ぐして支払
要求に応じたものである。
そうすると、本件別口金により支払われた■■■■■■は、請求人及び
■■■■によって、■■■の関係者である■■■■に対し、本件売買契約
を円滑に進めるために、贈呈されたものと認めるのが相当である。
→ 交際費等に該当すると判断された
(争点2について)
○ 請求人別口金により支払われた■■■■■■は、上記(1)のロの(ロ)
のFのとおり、交際費等に該当するが、前記1の(4)のリの(ハ)の
とおり、請求人の総勘定元帳には「■■■■■■■■」と記載され、
「商品土地仕入高」勘定として損金の額に算入されており、■■■■は、
当審判所に対して、本件売買契約の決済は1回でしており、総勘定元帳
に「土地手付金」と記載したのは私が指示したものではなく、経理の者
のミスである旨答述する。
この点、■■■■が請求人別口金により支払われた■■■■■■の経理
処理にいかなる関与をしたか明らかではないが、この■■■■■■の
支払は、■■■の会長と称される■■■■から本件売買契約の締結過程
で求められ、その締結及び代金支払と同じ機会になされたことからすれば、
■■■■が当該■■■■■■を本件土地等の代金の支払に含まれるものと
認識していたことは十分考えられ、交際費等に当たるものと認識していた
と認めるに足りる証拠はない。
○ そうすると、請求人が、請求人別口金により支払われた■■■■■■を
本件土地等の売買代金として損金の額に算入したことについて、故意に
事実をわい曲し、あるいは隠ぺい・脱漏したとまでは認められない。
○ また、上記(1)のロの(ロ)のEの(A)のとおり、■■■■■に相当
する金額については、売上原価に過大計上されていないのであるから、
故意に事実をわい曲し、あるいは隠ぺい・脱漏したとは認められない。
→ 重加算税ではない、と判断された
いかがでしょうか?
不動産取引に伴い、個人に金銭が渡ることはありますが、当然、本件のような
場合は交際費等に該当するものとなります。
しかし、その勘定科目が納税者の認識と違っただけであり、それが隠ぺい、
仮装に該当しないならば、当然、それは重加算税の対象になるものではあり
ません。
実際、「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」にも「確定し
た決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について
制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合」は「帳簿書類の隠匿、
虚偽記載等に該当しない」とされています。
同様の取引きは他の事例でもあるでしょうし、また、重加算税との指摘を
受けることもあるでしょうから、その際は本裁決を提示し、粘り強く交渉
することが大切と考えます。
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