不当な税務調査の修正申告提出から3ヵ月超でも是正する方法
※2024年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
顧問契約・関与が変わった場合、税理士・会計事務所として
真っ先にやることが、過去の申告書等の確認でしょう。
そこで、「誰が考えても納得できない処理」の修正申告が
提出されていた場合、どのように対応するでしょうか?
経営者に聞いても、否認指摘の内容・事情と修正申告の処理が
まったく結びつかず、明らかに増差が高くなるように否認指摘を受け、
(おそらく)前任の顧問税理士がそのまま受け入れたケースです。
ここでは、税務調査の結果として「増差税額が発生している修正申告を
2年前に提出」、かつ「重加算税が賦課された」事案だと仮定して、
これをできる限り是正する方法について解説します。
まず、考え得る方法は不服申立てなのですが、これは
「処分の通知を受けた日の翌日から3ヵ月以内」でなければ
行うことができません。ですから、期限を徒過しています。
国税庁タックスアンサー
「No.7200 税務署長等の処分に不服があるときの不服申立手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/fufuku/7200.htm
ここでまず、理解として重要なのは【税務署からの処分】でなければ
そもそも不服申立ての対象にならないということです。
提出した修正申告は処分に該当しないため、もともと
不服申立ての対象とはなりません。一方で、重加算税は
賦課決定処分ですから、不服申立ての対象とはなるものの、
上記のとおり期限を徒過していることから、重加算税については
回復不可能な部分となります。あきらめてください。
次に、本税(増差税額)にかかる修正申告ですが、
これは不服申立てはできないものの、更正の請求はできます。
「修正申告に対する更正の請求はできない」と規定した
法律がないので、できるのは当然なのですが、税務調査の
手続きを定めた国税通則法第74条の11第3項でも、
確認規定として下記とされています。
「(略)当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は
期限後申告を勧奨することができる。この場合において、
当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を
提出した場合には不服申立てをすることはできないが
更正の請求をすることはできる旨を説明する(略)」
当然ですが、ここで話は終わりません。
修正申告に対する更正の請求が通ればいいのですが、
税務調査の結果として「調査官の勧奨に従い、その内容に納得した
からこそ(納税者が自ら)修正申告を提出した」というのが
外形的な理解ですし、当時の調査官も税務署内の決裁を
とっているわけですから、修正申告に対する更正の請求が
すんなり通る(還付される)確率は高くないはずです。
残念ながら提出した更正の請求が通らなかった場合、
「更正の請求に対してその請求をすべき理由がない旨の通知書」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/001115/pdf/04/04_314.pdf
を受け取ることになるのですが、この通知は処分ですので、
通知を受けてから3ヵ月以内であれば不服申立てができます。
国税不服審判所Q&A
「Q)更正の請求に対する「一部又は全部に理由が
ないとした処分」でも、不服申立てできるの?」
https://www.kfs.go.jp/system/faq/0210.html
全体をまとめると、こうなります。
●加算税(重加算税を含む)
・3ヵ月以内であれば不服申立てをすることができる
・3ヵ月超の場合は是正する手段はない
●修正申告(本税部分)
当初申告の法定申告期限から5年以内であれば
更正の請求をすることができ、それが通らない場合は
不服申立てをすることが可能となる
自身が関与・立会いしていない税務調査において
提出された修正申告書(の内容)に関心をもつ
税理士・会計事務所は多くないのかもしれませんが、
不服申立てまでいくかはともかく、更正の請求はできる旨の
説明くらいは関与先経営者にすべきでしょう。
それによって当初から信頼関係を構築できるでしょう。
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