不服申立てをする判断基準
※2014年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
不服申立ての手続きが大改正になるということで、
詳細に解説している記事が目立つようになりました。
これは、行政不服審査法の大改正を指していますが、
そもそも税務行政では、基本法・一般法として行政不服審査法が存在し、
特別法として国税通則法や個別税法があるという構造になっています。
国税の不服申立てでは、まず特別法である個別税法が適用され、
次に国税通則法が適用され、これらに規定のない場合に
行政不服審査法が適用されることになるわけです。
普段の実務において、行政不服審査法が適用になる場面が
そうそう無いでしょうから、条文を読んだことある税理士は
少ないかと思いますが、今回の大改正を機会に
読んでいただければと思います。
(なお、改正内容の施行は再来年です)
さて、税務調査の結果、更正処分を受けた場合、
現実的に不服申立てをするのかどうかを判断する
必要性があるわけですが、その基準を示しておきましょう。
①不利益変更
不服申立てとは、あくまでも納税者の救済制度です。
税務署から恣意的な課税を受けた場合のように、
納税者を救うことが目的となっていますので、
不服申立てをしたからといって、税務調査以上の不利益
(更正以上の税額の増加など)はありません。
行政不服審査法第40条第5項
(略)審査請求人の不利益に当該処分を変更し、
又は当該事実行為を変更すべきことを命ずることはできない。
税務調査では論点にならないまま、他の論点で
更正処分を受けた。不服申立てで調査がやり直しになると、
論点が増えるのではないかと危惧している税理士も
多いようですが、それは無いということです。
(いわゆる、争点主義的運営)
②費用
不服申立てはあくまでも訴訟ではなく、あくまでも行政手続きです。
ですから訴訟とは違い、手数料などは一切かかりません。
納税者が負担すべき費用としては、税理士や弁護士に
依頼する費用や交通費のみとなります。
③税理士で対応可能
訴訟は通常、代理人となる弁護士に依頼することになりますが、
不服申立ては弁護士に依頼する必要はありません。
税務調査の延長で、税理士が代理人になることができます。
(税理士法第2条第1項第1号)
なお、この点勘違いしている税理士が多いのですが、
・調査の結果、修正申告をしても附帯税は処分なので
加算税だけで不服申立てすることができる
・更正の請求の結果、還付されないことが確定すれば
不服申立てをすることができる
(「更正をすべき理由がない旨の通知」を受取ることが
不利益処分という考え方です)
になります。
「不服申立ての対象等」
http://www.kfs.go.jp/system/object.html
不服申立てというだけでハードルが高いように
思われがちですが、あくまでも行政救済制度なので、
ぜひ活用すべきかと思います。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。