不正=重加算税ではない
秋の税務調査の時期を本格的に迎え、弊社にも
税務調査の依頼が多く入っています。
そのほとんどに重加算税が絡んでいて、私としては
再度このメルマガで強調しておくことにしました。
調査官に「これは重加算税ですよ!」と言われたらどんな場合も
「なぜ重加算税なんですか?」と質問してください。
「これが重加算税になるわけがない」と思っても、
答えを知っていても、とりあえず質問してみてください。
そうすると、90%以上の確率で調査官はこう答えるはずです。
「これは不正ですから」と。
「不正=重加算税」は根拠として「確実に誤り」です。
私がこの解説をする場合に、国税通則法68条と70条は
違うという法律論とともに、よく出す実例がアメリカ大使館事件です。
本ブログでも、「税務調査の遡及年数」において
解説していますが、再掲します。
「給与等の収入金額をことさら過少に申告した行為は、
「偽りその他不正の行為」に該当するとされた事例」
http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/sinsabunkakai/011119/shiryo/02_02.htm
この事案の公開裁決事例はこちらです。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/62/03/index.html
さて、結論をいうと、
国税通則法第70条に定める「7年遡及」は
「偽りその他不正の行為」なのですが、この範囲の方が広く、
その中に国税通則法第68条が定める「隠ぺいまたは仮装」
という行為が含まれる、と考えてください。
つまり「隠ぺいまたは仮装」とは「偽りその他不正の行為」の
一形態・行為に過ぎない、ということです。
逆にいえば、「隠ぺいまたは仮装」に該当するのであれば、
すべて「偽りその他不正の行為」に該当するともいえます。
このように何度も書いても、「隠ぺいまたは仮装」と
「偽りその他不正の行為」の違いが認知されない以上に、
アメリカ大使館の例のように、「特異な例」しかないのか!?
と、疑義を持たれる方も多いようです。
そこで、上記が私の個人的な見解ではないことの証左として、
この記事をご覧ください。東京税理士会の会報誌ですが、
非常にわかりやすく、また裁判例を挙げて解説しています。
http://www.tokyozeirishikai.or.jp/tax_accuntant/pdf/2011/sep_02.pdf
※非常に大事ですので、ぜひご覧ください
ここで大事なのは「第8 まとめ」の最初にある部分です。
「偽りその他不正の行為に該当するけれども隠ぺい仮装行為に該当しない場合は存在する
(典型例は最高裁平成17年1月17日判決、松尾事件)。反面、
隠ぺい、仮装行為に該当するが偽りその他不正の行為に該当しないケースは
論理的にはありえるけれども事実上は存在しないのではないだろうか」
話を戻すと、税務調査において重加算税だと言われたら、
①調査官に(あえて)根拠を聞く
②「不正」と答えたら、上記URLなどを持ちだして
「不正」と「隠ぺいまたは仮装」は相違することを主張する
③「隠ぺいまたは仮装」以外の答えであれば
「それでは国税通則法第68条に該当しない」と反論する
あくまでも「隠ぺい・仮装に該当しないと
重加算税にならない」ことを主張してください。
その上で、この事務運営指針を提示することで、
うやむやな重加算税は回避することが可能になります。
「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/000703-2/01.htm
「申告所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-2/01.htm
「相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sozoku/000703-2/01.htm
「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shozei/010329-2/01.htm
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2012年9月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。