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2016.06.15

中古資産に法定耐用年数を適用したら・・・

※2015年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

さて、今回は「中古資産に法定耐用年数を適用したら・・・」ですが、

平成26年2月4日の裁決を取り上げます。

なお、本件は「税理士自身が請求人」という事案で、下記の状況です。

○ 中古の賃貸不動産を購入

○ 建物の耐用年数を法定耐用年数とした

○ 耐用年数を誤ったとして、更正の請求をした

○ 原処分庁は更正をすべき理由がない旨の通知処分をした

ちなみに、本裁決でも取り上げられていますが、これに関する耐用年数通達があります。

(中古資産の耐用年数の見積法及び簡便法)

1-5-1 中古資産についての省令第3条第1項第1号に規定する方法(以下

1-7-2までにおいて「見積法」という。)又は同項第2号に規定する方法

(以下1-5-7までにおいて「簡便法」という。)による耐用年数の算定は、その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度)においてはその算定をすることができないことに留意する。

そして、国税不服審判所はこれを踏まえて、下記と判断しました。

<法令解釈>

○減価償却資産の耐用年数とは、減価償却資産の本来の効用の持続する年数であり、その内容については、所得税法施行令第129条《減価償却資産の耐用年数、償却率等》の委任を受けた耐用年数省令に定められている。

○耐用年数省令第1条は、各減価償却資産の法定耐用年数を定めているが、中古で取得した減価償却資産については、同省令第3条第1項に規定する簡便法等による耐用年数によることができる旨の特則がある。

○したがって、納税者は、中古で取得した減価償却資産の耐用年数として法定耐用年数を選定することも、簡便法等による耐用年数を選定することもできるのであるが、その事業の用に供した事業年度(年分)において簡便法等を選定しなかったときは、その後の事業年度(年分)においてはその選定をすることができない旨の通達の定め(耐用年数通達1-5-1)がある。

          

○そして、同通達の定めは、以下の理由から当審判所においても相当であると認められる。

○すなわち、減価償却は、減価償却資産が長期間にわたって収益を生み出す源泉であり、その取得に要した金額は将来の収益に対する費用の一括前払の性質を持っているので、費用収益対応の原則から、その取得費は、取得の事業年度(年分)に一括して費用に計上するのではなく、使用又は時間の経過によってそれが減価するのに応じ徐々に費用化するのが妥当であるという観点から認められている会計技術であるから、所得計算の適正を維持するためには同一の計算方法を継続的に用いることが必要となる。

○したがって、納税者は償却が開始される最初の事業年度(年分)に償却方法及び耐用年数を選定することを要するのであり、この点を明らかにした上記通達の内容は相当である。

○以上のことから、納税者が中古で取得した減価償却資産の耐用年数を簡便法等によって算定する場合には、当該資産を事業の用に供した日の属する事業年度(年分)において、これを選定することが必要である。

<当てはめ>

○請求人は、本件各建物を事業の用に供したそれぞれの年分において、その耐用年数について簡便法等ではなく法定耐用年数を選定していることから、平成23年分の不動産所得の金額の計算上、もはや本件各建物の耐用年数を簡便法等によって算定することはできない。

○この点、請求人は、法定耐用年数は、新築建物について適用されるものであるところ、本件各建物は、いずれも中古で取得した資産であるから、本件各建物の耐用年数は、簡便法等によって算定すべきである旨主張するが、中古で取得した資産であってもその耐用年数として法定耐用年数を選定し得ることは上記のとおりであり、また、請求人が、本件各建物について、事業の用に供したそれぞれの年分において、その耐用年数について簡便法等を選定していなかった以上、もはや本件各建物の耐用年数を簡便法等によって算定することはできないから、請求人の主張は採用できない。

本事案は税理士自身の事案であったにも関わらず、中古の耐用年数を採用しなかったばかりに、減価償却費が将来に渡っても減ってしまったというものです。

これが顧問先の申告だったら、どうでしょう・・・。

怖いことです。

ちなみに、通常の更正の請求は「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたこと」というのが要件です(国通法23①一)。

つまり、この場合の更正の請求は「間違い」が無ければ、できないのです。

耐用年数通達は普段あまり目にすることが少ない通達だけに、落としてしまう要素もありますので、最低限のところはチェックしておきたいところです。

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