争点整理表から税務調査を知る
※2015年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
あまり知られていませんが、税務調査手続の改正に
ともなって、調査官の負担が増えた一因として
「争点整理表」の作成が挙げられます。
この「争点整理表」の作成基準を知ることで、
税務署の実態を知ることができるのです。
まず、争点整理表とは、ある一定の基準にかかった際に、
調査官が作成しなければならない書類となっています。
その基準とは、
①重加算税の賦課
②(増額)更正
③青色の取消し
④偽りその他不正の行為による6~7年前遡及
⑤調査着手後3ヶ月超の長期仕掛事案
⑥一定の増差所得金額基準に該当する場合
(増差所得金額が多額になる場合)
となっており、税務署としては処分等の後に
納税者とモメる可能性が高い事案について
争点整理表の作成を義務付けていることがわかります。
ここで興味深いのは、⑤でしょう。
税務署は、「調査が長引く=トラブルの元」を
考えており、増差金額や重加算税賦課に関係なく
ただ長引いている事案でも、この書面を作成
させているところは、着目すべきところでもあり、
また調査の交渉方法としても使えます。
争点整理表は、「事実関係時系列表」と
「調査経過記録書」の2種類が存在しています。
具体的内容としては、「争点整理表・調査経過記録書の
作成に当たっての留意点について(情報)」
(平成25年5月7日 国税庁 課税総括課 第2号)
に載っていますので転載しておきましょう。
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問3 争点整理表の事実関係時系列表は、
どのような記載をすればよいのでしょうか。
争点整理表の事実関係時系列表は、争点等に係る課税要件に
関する事項・事実関係(納税者の主張を含む。)について、
その事実を示す証拠とともに事実の発生年月日
(調査着手前を含む。)順に記載するものです。
このため、調査着手時からの納税義務者等との応接状況を
時系列により記載する調査経過記録書とは
異なることに留意する必要があります。
問5 調査経過記録書は、調査時における納税義務者等との
応接状況等を記載することとされていますが、具体的に
どのような内容をどの程度記載すればよいのでしょうか。
調査経過記録書は、調査において検討、確認した事項や
復命に際して統括官等から指示を受けた事項を記載し、
調査事案の管理や調査の内容を記録として残しておくことを
目的として作成するものです。このため、事前通知時からの
納税義務者等との応接状況などの論査経過や検討、
確認した内容、相手方の主張、調査により把握した問題点等
について、時系列に記載することとしていますが、
納税者とのやり取りを逐一記載するといった必要以上の記載は
不要ですので、メリハリのある記載に心掛けてください。
具体的には、例えば、納税義務者等との応接において
じ後の争点となると思料される内容(非違事項の内容など)
については、確認した内容(調査箇所、調査した書類、
調査先の担当者名)や相手方の主張のほか、調査により
把握した問題点を簡潔に記載することとします。
(注1)聴取書、争点整理表又は調査結果の説明書に
記載した内容については「●●のとおり」として記載を
省略して差し支えありません。ただし、調査結果の
内容説明において納税義務者等からの反論の主張があった
場合には、その内容を確実に記載することに留意してください。
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調査官の本音としては、「争点整理表」などという
面倒な書面は作りたくないわけです。
調査官が納税者(税理士を含む)とモメる実益は
ないですし、調査が長引いて困るのは実は
調査官の方であることはご理解いただけたかと思います。
ぜひ、税務調査対応の参考にしてください。
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