事務運営指針で重加算税の指摘を受けた場合の正しい反論
※2023年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
国税は先週月曜(6月28日)が異動の内示日、
来週月曜(7月10日)が異動日となっていますが、
今年は異動明けすぐの税務調査が増えているようです
(担当調査官未決の事前通知が早い・多い)。
さて、今回のメルマガは税務調査において調査官から、
事務運営指針の規定内容を根拠に重加算税と
指摘された場合の反論方法について解説します。
重加算税に関する事務運営指針は、各税目ごとに
規定されていますが、今回は具体的に法人税を取り上げます。
まず、前提となる理解ですが、事務運営指針とは「通達」
(上位官庁から下位官庁に対する命令・規則)の1類型です。
重加算税の要件(の1つ)として、国税通則法第68条
において「隠蔽又は仮装」と規定されているわけですが、
「隠蔽又は仮装」の定義は国税通則法に規定がなく、
曖昧な概念であることから、その「例示」として事務運営指針が
存在する、という全体の理解になります。
ですから、税務調査において調査官と「隠蔽又は仮装」に
該当する/しないのやり取りになった場合、事務運営指針の
規定内容をもって主張・反論することになるわけです。
さて、売上(や雑収入)の計上漏れがあった場合に、
調査官が持ち出してくる事務運営指針の規定は下記です。
法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
第1賦課基準 1(隠蔽又は仮装に該当する場合)
(2)[3]帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、
売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう
又は棚卸資産の除外をしていること。
この規定をパッと読むと、「帳簿への記録なく売上漏れが
あった場合=重加算税」と読めてしまう(だから調査官も
勘違いしているケースが多い)のですが、明らかに
事務運営指針の解釈として間違っています。
●「隠蔽又は仮装」の例示になっていない
上記の解釈である「帳簿への記録なく売上漏れがあった場合
=重加算税」が正しいとすれば、法人における
売上(や雑収入)の計上漏れは全て重加算税になります
(これがおかしいことは直感的にも理解できると思います)。
この解釈であれば、「隠蔽又は仮装」の例示になっておらず、
事務運営指針の趣旨から逸脱しています。
●読み方・解釈を誤っている
上記の規定は、売上計上漏れを前提とした場合、
「帳簿記載なく、かつ脱ろう」が正しい解釈になります。
ここで「脱ろう」の意味合い・定義が難しいのですが、
少なくとも「隠蔽又は仮装」の例示であること、また
「除外」と並列で使用していることから、
「故意に抜いた」という読み方・解釈となります。
税務調査において調査官から重加算税と指摘され、
事務運営指針を持ち出したはイイが、逆に
調査官から事務運営指針の規定内容から反論され、
それに反論できない、という状況はよくあります。
特に、重加算税の事務運営指針においては、
その趣旨および文言の意味合い・定義を誤認せず、
適正な反論材料として使用すべきです。
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