事務運営指針とは一体何か?
今回のテーマは、『事務運営指針とは一体何か?』です。
以前、元国税で現在は租税法の権威である酒井克彦先生と
コラボのセミナーを開催させていただきました。
参加者は少なかったものの、内容は本当に充実していました。
評点平均は過去最高の4.91点(5点満点)なのですから!
正直申し上げて、税務調査のコンテンツで他の人から学ぶことが
あまりないと思っていましたが…まったくもって勘違いでした。
酒井先生の話は私が知らないこと・知りたいことの宝庫でした。
さて今回のメルマガは、セミナーを受講して、
私が認識できていなかった内容をあえて書かせていただきます。
私が何をわかっていなかったかというと、ズバリ
「事務運営指針とは一体何か?」ということです。
このメルマガでもよく、事務運営指針を紹介していますし、
事務運営指針は税務調査の反論根拠として実務上も
非常に重要な位置づけにあることは認識していました。
しかし、「事務運営指針とは?」などで検索しても
事務運営指針の定義を明記したサイトが見つからなかったため、
ずっと私の中でモヤモヤがあったのです。
さて結論から書くと、事務運営指針とは通達と同じ「内規」です。
通達は、上位官庁(通常は国税庁)が下位官庁(国税局や税務署)
に対して発する内部規則(内規)ですが、
事務運営指針もこれと同じだということなのです。
違いは、
事務運営指針:国税の「内部事務」を行うにあたって国税全体が守るべき統一的なルール
通達:「法令解釈」を行うにあたって国税が守るべき統一的な解釈
(基本通達が代表的なもの)
ですから、事務運営指針は納税者を拘束しないにせよ、
通達と同じように税理士が知っておかなければならないものなのです。
事務運営指針は通達と同じく内規ですから、
調査官もこれを守らなければ処分の対象になるのです。
国家公務員法第98条
(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、
且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
こちらが公表されている事務運営指針です。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/jimu.htm
事務運営指針をきちんと読んでみると、
実は税目ごとに微妙な違いを見つけることができます。
例えば、同じ過少申告加算税の取扱いを定めた事務運営指針。
「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/000703/01.htm
「申告所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703/01.htm
比較してみると、申告所得税には
(4)確定申告の納税相談等において、納税者から十分な資料の提出等が
あったにもかかわらず、税務職員等が納税者に対して誤った指導を行い、
納税者がその指導に従ったことにより過少申告となった場合で、かつ、
納税者がその指導を信じたことについてやむを得ないと認められる事情があること。
の記載がありますが、法人税にはないのです。
(一般的にいう「誤指導」が正当事由にあたるのかどうか)
このあたりも基本通達と同じで、税目ごとに
若干の取扱い基準が違う部分があるので、
ぜひ注意して読み、実務に役立てなければなりません。
繰り返しになりますが、事務運営指針は調査官が守るべきものなので、
税務調査の現場等で守られていなければ、事務運営指針をもって
反論根拠とすることが可能です。ぜひ活用してください。
※2011年9月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。