事業承継税制の要件から考える経営承継2
※2023年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、前回に引き続き
「事業承継税制の要件から考える経営承継2」です。
前回は、事業承継税制(特例版:贈与)では、
(1)まず、代表取締役を交代し
(2)次に、贈与によって株式を承継する
これらの流れが求められることを解説しました。
今回は、これらの根拠を条文で確認するとともに
タイムリミットまでの検討事項をご紹介します。
代表取締役の交代が求められている根拠は
以下のとおりとなります。
先代経営者の要件(一部):
—(措令40の8の5(1)一ハ)
ハ 当該贈与の時において、当該個人が当該特例認定贈与承継会社の代表権を有していないこと。
—
贈与時に代表権を有していないことが
要件であるため、過去のいずれかの時点で
代表取締役であれば足ります。
後継者の要件(一部):
—(措法70の7の5(2)六ロ)
ロ 当該個人が、当該贈与の時において、当該特例認定贈与承継会社の代表権
(制限が加えられた代表権を除く。次条及び第七十条の七の八において同じ。)を有していること。
—
贈与時に代表権を有していることが
要件であるため、贈与する前に
代表取締役に就任していることが
必要となります。
代表取締役の交代といっても、
経営の中枢として経営の経験が
ない者を代表にしても、
経営を円滑にすることは
厳しいと言わざるを得ません。
そのため、
贈与により株式を承継させる場合には
受贈者側である後継者に役員就任要件が
求められます。
正確には
「贈与日まで継続して
3年以上役員であること」
が求められます。
根拠は以下のとおりです。
—(措法70の7の5(2)六ヘ)
ヘ 当該個人が、当該贈与の日まで引き続き三年以上にわたり
当該特例認定贈与承継会社の役員その他の地位として財務省令で定めるものを有していること。
—
「引き続き」とありますので、
贈与日までの継続要件と読み取れます。
「財務省令で定めるもの」を
深堀すると以下のとおりです。
—(措規23の12の2(10))
10 第二十三条の九第九項及び第十項の規定は、法第七十条の七の五第二項第六号ヘに規定する
役員その他の地位として財務省令で定めるものについて準用する。
—
—(措規23の9(9))
9 法第七十条の七第二項第三号ヘに規定する役員の地位として財務省令で定めるものは、
会社法第三百二十九条第一項に規定する役員とする。
—
—(会社法329(1))
第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び
会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
—
よって、役員とは
取締役、会計参与、監査役を指す
ことになりますが、実務的には
取締役に就任することが一般的かと
思われます。
上記を総合的に勘案すると、
贈与により株式を承継する場合を想定すると
後継者は、
・令和6年12月31日までに役員就任
・令和9年12月30日までに代表就任
・令和9年12月31日に株式承継
という流れがタイムリミットになる
のではないでしょうか。
もちろん、
組織運営上、簡単に後継者を役員に
就任させることが、組織内で
ハレーションを生む原因になることも
想定されます。
また、
株価対策してから贈与した方が
期限確定した際のリスクヘッジできる
ことから、代表の退任に伴う
役員退職慰労金支給のタイミングと
決算をまたぐタイミングを併せて
検討する必要があることも事実です。
様々な要因を総合的に勘案し
株式の承継を検討することが
事業承継税制では求められることになります。
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