交際費認定された談合金の是非
さて、今回は「交際費認定された談合金の是非」です。
土木建築業を営む会社の場合、「談合金、交際費」ということが税務調査で問題になる場合があります。
今日の事例は何らの工事をしない外注先に外注費を支払い、さらに、その外注先が再外注先に外注費を支払ったと認定され、その差額が交際費であると否認され、争われた事例です。
なお、平成6年5月9日の裁決で、TAINS番号は「F0-2-070」です。
まずは、前提条件ですが、裁決文の概要を箇条書きにまとめました。
○ 請求人は一般土木建築工事業を営む同族会社
○ 今回、問題になった工事は護岸工事などで複数
○ 請求人が外注先に支払った外注費は6億8,950万円(3期合計)
○ 外注先に再外注先に支払った外注費は5億7,842万円(3期合計)
○ 差額1億1,108万円が交際費とされた
○ 仮装取引ということで、重加算税も課された
○ 工事の指示は請求人の現場監督から再外注先に行なわれていた
○ 工事の施工は請求人と再外注先が行なっていた
○ 見積書は再外注先から請求人に提出されていた
○ 再外注先の請求書は請求人の現場監督がチェックしていた
○ 外注先は社員1~2名を現場に派遣していた
○ 外注先が官公庁の指名業者となるため、受注した工事もあった
○ 外注先50%、再外注先50%の施行割合の工事もあった
○ 外注先も入札に参加していた工事が7件あった
○ 外注先は営業活動を通じての自薦他薦を総合判断して選定
○ 特殊な工事については機械、特許等を所有する会社が優先
このような状況の中、審判所は下記と判断しました。
○ 原処分庁は本件工事は工事内訳書の添付がなく、外注先を
介在させての仮装取引(交際費)としたが、資料からは
外注費の差額を談合金と認定するに足る直接的な証拠資料、
これを推認するに足る証拠資料を得ることができない
○ 審判所の調査その他による資料でも交際費に該当する心証を
得られない
○ 外注費の差額を交際費と認定することはできない
ただし、「請求人の主張、説明等は必ずしも一貫していおらず、全面的には措信しがたいが、そのことをもってしても、この判断をくつがえすことはできない」とも示しています。
何かと不透明なことが多い土木建築業において、請求人の主張、説明が一貫していないにも関わらず、交際費認定を回避できたことは注目すべき裁決と考えます。
なお、談合金と交際費の関係は措置法通達61の4(1)-15で「建設業者等が工事の入札等に際して支出するいわゆる談合金その他これに類する費用」とされています。
ただし、この「その他これに類する費用」の範囲は明確ではありませんが、逐条解説を読むと「談合金は不正の請託に関連した一種の賄賂のごときものであるから、贈答その他これに類する行為のための支出となり、交際費に該当する」という旨が書かれています。
事案は変わりますが、萬有製薬事件(東京高裁 平成15年9月9日)があります。
この事案は「医師から収受した英文添削料 < 添削業者に支払った金額」
となり、その差額が交際費か否かで争われ、納税者が勝った事案です。
この中で交際費として成立するための下記3要件が示されています。
○ 支出の相手方・・・事業に関係ある者等
○ 支出の目的・・・事業関係者等との間の親睦の度を密にして、
取引関係の円滑な進行を図ること
※ 支出の目的が接待等のためであるか否かについては、当該支出の動機、
金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断すべき
○ 行為の形態・・・接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為
ダイレクトに2つの事例がリンクする訳ではありませんが、交際費の成立要件を検討する場合には重要な要件となります。
いかがでしょうか?
土木建築業界に限りませんが、判断が難しい微妙な支出を伴う業界は現実に存在します。
もし、それが交際費か否かの判断をしなければならない場合、(特に、土木建築などの業界であれば、)今日の裁決は参考になるものです。
税務調査で同じような経費が交際費と指摘された場合は今回の裁決を例に出し、税務調査官と交渉してみてください。
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2013年1月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。