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2021.12.06

交際費課税を広く捉えた否認指摘に反論する根拠

※2020年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、交際費課税について
解説していますが、税務調査で調査官は
交際費の範囲を広く捉えた否認指摘を
してくる場合が多くあります。

リベート・バックマージン等については
すでに解説しましたが、特に
対価性が明確ではない支払いに関しては、
交際費だと指摘されるケースがあります。

実際にあった質問・相談では、外注先に
対して後日支払った、追加の外注費が
交際費と指摘された事例が複数あります。

このように、調査官が交際費の範囲を
広く捉えて否認指摘した場合に、汎用的に
反論できる根拠として下記判決があります。

東京高裁平成15年9月9日判決
(Z253-9426)
租税特別措置法第61条の4に規定する
「交際費等」が、一般的に支出の相手及び目的に
照らして、取引関係の相手方との親睦の度を
密にして取引関係の円滑な進行を図るために
支出するものと理解されていることからすれば、
当該支出が「交際費等」に該当するというためには、
【1】「支出の相手方」が事業に関係ある者等であり、
【2】「支出の目的」が事業関係者等との間の
親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を
図ることであるとともに、
【3】「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答
その他これらに類する行為であること、
の三要件を満たすことが必要であると解される。
そして、支出の目的が接待等のためであるか否か
については、当該支出の動機、金額、態様、効果等
の具体的事情を総合的に判断して決すべきである。

いわゆる「萬有製薬事件」の【三要件説】で、
交際費課税は上記3つの要件全てを
満たした場合にのみ適用されるとした
考え方です。

特に、実務上よく問題になる判断要素として
「接待、供応、慰安、贈答その他これらに
類する行為」がどこまでの範囲なのかを
挙げることができます。

調査官が交際費を広く捉える場合、
対価性が明確ではないことから、
「実質的にその他これらに類する行為に
含まれる」と拡大解釈するのでしょう。

一方で、上記の判決(最高裁棄却により
高裁で納税者勝訴確定)では、
上記【3】「行為の形態」の要件において、
法律の規定どおり、飲食・贈答等の費用に
限定されると解釈されています。

税務データベースでは、下記の
解説もありますので参考にしてください。

641―2交際費等の範囲
(会社税務事例P3巻2011の5)
交際費課税の制度は、冗費の抑制を目的として
設けられたものであり、年々強化され今日に
至っているが、交際費等の範囲についても
拡張的に解釈される傾向がある。しかし、
交際費課税の対象となる接待等の行為に
間接的に支出したもののすべてを交際費等
として課税する必要はなく、飲食、贈答等の
費用に限定することが本来の趣旨的解釈に
合致するものと考えられる。したがつて、
本事例では、(1)案内状の印刷費、送料、
(2)お客のための車代、
(3)担当従業員の超過勤務手当、
(4)担当従業員のタクシー代、
(5)パーティーの礼状の印刷費、送料等
は交際費等に含める必要はないことになる。

全ての事案において三要件説が
当てはまるわけではないのでしょうが、
調査官の拡大解釈は上記を根拠に
反論可能な事案が多いので、
ぜひ参考にしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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