交際費課税:リベートの相手方を明かせない場合の対応1
※2020年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週の金曜メルマガから引続き、
取引相手方の役員・従業員に対して
リベート等を支払ったケースですが、
今回から複数回にわたり、税務調査では
よく問題になる【相手方を明かせない】場合
の否認論点とその対応方法を解説します。
実際にこの論点に関する相談・質問は
直近だけでも複数回あって、調査対応は
どれもかなり難しいものとなっています。
リベートや贈答の相手方を明かせない場合、
・損金不算入(費途不明の交際費など)
・役員賞与
・重加算税
・使途秘匿金課税
・仕入税額控除の否認
など論点は多岐にわたりますが、これらの
各論は次回以降で順次解説していきます。
税務調査において支払い相手方を明かせない
場合でまず大事になるのは、「税務調査で
指摘されたらどう反論しよう?」ではなく、
【税務調査の論点にしない】ことです。
上記の通り、リベートの相手方を明かさない
ということは、多岐にわたる否認論点に加え、
取引先法人に反面調査されるリスクがあるなど、
単純な損金不算入では済まないでしょう。
私が相談を受ける多くの調査事案では、
「損金不算入になるのは仕方ないが、
重加算税は受け入れたくない」
「秘匿金課税など多額の追徴は逃れたい」
というものです。
相手方を明かさないことに対する
損金不算入などある程度の不利益を受け入れる
ことを容認するのであれば、当初から
「法人での処理・支払いにしないこと」
=【役員報酬の増額分から支払うこと】です。
年間に発生する支払いリベートを
100万円として考えてみましょう。
役員報酬の金額によって税率は変わりますが、
それほど高い設定でないのであれば、
役員報酬を年間150万円程度上げます。
役員報酬は(過大でない限り)損金になります。
その税引後の手取り増額分である100万円で
リベートを支出すれば法人の帳簿に載らないので、
法人調査の論点にはなり得ません。
もちろん、相手方個人の申告内容等で
リベート支払の事実を把握されたとしても、
あくまで役員個人から取引先個人の贈与なので、
法人・個人が何か追及されるリスクもありません
(あくまでも課税上の話です)。
もちろんこの方法をとっても、支払った
リベートが全額損金になるわけではありません
(社保負担なども増えることになります)。
しかし、「相手方を明かせない」ということを
最優先で考えるのであれば、この方法を
とることがもっとも現実的ですし、かつ
税務調査でモメることがなくなるという
メリットがあります。また、交際費が
800万円を超えている法人では、
この方法によって全体としての実効税率が
下がる可能性もあります。
「リベートの支払先を明かせない」という
調査事案の相談を受けるたびに、
「税引後の役員報酬で支払っておけば
面倒は起こらないのに」と思ってしまいます。
相手方を明かせないリベート・贈答をしている
顧問先にはぜひ上記を提案してください。
来週の本メルマガでは、同論点における
「費途不明の交際費」を解説します。
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