仕入税額控除の要件である法定帳簿とは?
※2016年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「仕入税額控除の要件である法定帳簿とは?」ですが、
平成23年3月30日の裁決をご紹介します。
さて、消費税の仕入税額控除ですが、帳簿及び請求書等に法定の記載事項が
あることが要件です。
では、これに不足があれば、直ちに仕入税額控除が否認されて
しまうのでしょうか?
本裁決はこれに関して、判断がされた事例です。
まずは、該当条文(消法30)を確認してみましょう。
8 前項に規定する帳簿とは、次に掲げる帳簿をいう。
一 課税仕入れ等の税額が課税仕入れに係るものである場合には、
次に掲げる事項が記載されているもの
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
ニ 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう。
一 事業者に対し課税資産の譲渡等(略)を行う他の事業者(略)が、
当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書
その他これらに類する書類で次に掲げる事項(当該課税資産の譲渡等
が小売業その他の政令で定める事業に係るものである場合には、イから
ニまでに掲げる事項)が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行つた年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に
行つた課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、
当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額
及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を
含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
これに関する国税不服審判所の判断は下記です。
イ 法令解釈等
(イ) 法定帳簿及び法定請求書等の保存について
A 事業者が、国内において行う課税仕入れに係る消費税額の控除を
行うためには、消費税法第30条第7項により、事業者が当該課税期間の
課税仕入れの税額の控除に係る帳簿及び請求書等、すなわち、法定帳簿
及び法定請求書等を保存することが要件とされているところ、当該保存
が要件とされた趣旨は、資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で、広く、
かつ、薄く資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を
確保するには、法定帳簿及び法定請求書という確実な資料を保存させ、
権限ある課税庁職員の必要あるときは法定帳簿及び法定請求書を検査
することが可能であるときに限り、課税仕入れに係る消費税額の控除
の適用ができることを明らかにしたものであると解される。
このうち、法定帳簿については、その対象物が帳簿であること、
すなわち、継続的に記帳され、日々の取引を証ひょう書類等の原始記録
を基に記録されるものであることはもとより、同条第8項により、課税
仕入れに係る(1)相手方氏名等、(2)課税仕入れの年月日、
(3)その役務等の内容及び(4)対価の額の法定記載事項の各記載が
必要である。
そして、法定請求書等については、別紙3の10のとおり、課税仕入れに
係る資産又は役務の内容、支払対価の額等の同条第9項第2号所定の
内容が記載された一定の請求書等に限られている。なお、法定請求書等
について、当該課税仕入れに係る支払対価を金融機関等に振り込む
方法で支払った際に、金融機関が発行する振込金受取書等の文書を
保存している場合、当該振込金受取書等には、同条第9項第2号所定の
内容のうち「課税仕入れに係る役務等の内容」について記載されないが、
他の文書と共に保存することで同条第9項第2号所定の内容が客観的に
網羅されると認められるときは、法定請求書等の保存があると解する
のが相当である。
B また、課税仕入れに係る消費税額の控除の適用要件として「帳簿及び
請求書等」の保存が求められていることからすれば、法定帳簿及び
法定請求書はそれぞれ独立して上記Aのとおりの消費税法上の要件を
満たし、その保存がなされている必要があると解するべきであり、
したがって、例えば、ある課税仕入れについて、法定請求書等の保存が
あったとしても、法定記載事項を満たさない帳簿の保存しかない場合
には、課税仕入れに係る消費税額の控除の適用は認められないと
解するのが相当である。
これを踏まえて、仕入税額控除は認められないとした原処分庁の主張に
対して、国税不服審判所は下記と判断しています。
B 原処分庁の主張について
(A) 原処分庁は、本件出面帳について、その大半につき、法定記載事項
のうち(4)課税仕入れに係る支払対価の額がないことから、法定帳簿の
保存を定めた消費税法第30条第7項の趣旨に照らして、法定帳簿と認める
余地はない等と主張する。
確かに、上記イの(イ)のとおり、法定帳簿については、継続的に記帳され、
日々の取引を原始記録等を基に記載される必要があり、さらに、課税仕入れ
に係る(1)相手方氏名等、(2)課税仕入の年月日、(3)その役務等の
内容及び(4)対価の額の法定記載事項の各記載が必要であり、これらの
要件を欠く帳簿を法定帳簿として認めることはできないものの、上記ロの
(ロ)のとおりの本件出面帳の記載内容等を上記イの(イ)のとおりの法定帳簿
の保存を法が定めた趣旨に照らせば、本件出面帳のうち、法定記載事項の
すべてを満たしていると認められる部分のみを法定帳簿と認めることが
法定帳簿の保存を定めた法の趣旨に反するとはいえず、当該原処分庁の
主張を採用することができない。
結果として、部分的に法定帳簿の形式を満たしていないとしても、
法の趣旨には反しないと判断したのでした。
また、これに関しては下記情報もあります。
特に、「3 一定期間分の取引のまとめ記載」、「4 仕入税額控除の
要件としての帳簿代用書類の保存の可否」、「5 伝票会計の場合の帳簿の
保存」、「6 帳簿に記載すべき氏名又は名称」をご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6497.htm
併せて、ご確認ください。
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