令和4事務年度の法人調査事績を分析する
※2023年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
さて、毎年この時期に国税庁から発表されている
「調査事績の概要」について、例年通り11月末に
各税目の最新情報が公表されました。
今回のメルマガでは公表内容から、
法人の税務調査の傾向について解説します。
「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/hojin_chosa/pdf/01.pdf
※令和4事務年度=令和4年7月~令和5年6月
まず実地調査の件数ですが、前年対比152.3%増
(約62千件)と急増する結果となっていますが、
コロナの影響がなければ例年の調査件数は
約10万件程度であったことから、いまだに
通常時の3分の2程度の調査件数となっています。
法人税における税務調査での否認割合は、
47千件÷62千件=約75.8%
ということで、否認率は高割合が維持されており、
4件に3件という非常に高い水準となっています。
調査1件あたりの増差所得は12,570千円、
追徴税額は5,241千円となっており、
調査件数が増えつつも前事務年度と比べ、
調査1件あたりの増差所得・税額は減っています。
重加算税の賦課率である「不正発見割合」は、
「20.7%」となっており、前年よりも2ポイント
下がったものの、例年20%程度の割合ですから
いまだに高い賦課率となっています。
また、近年公表されている「接触率」。
実地調査件数と簡易な接触の件数を分子として、
年間で何%の法人に接触しているかを数値化したものですが、
●法人税・ 消費税:3.9%
●源泉所得税:5.7%
となっており、過去5年間の接触率はそれぞれ、
17.8%、30.0%となっており、簡易な接触
(税務署において書面や電話による連絡や来署依頼
による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の
見直しなどを要請するもの)を含めた率を向上させよう
という強い意図が見えます。
実地調査率が3%前後であると想定すれば、
30年に1回しか入らない税務調査では実効性が薄く、
今後も簡易な接触=その多くは行政指導が増えるでしょう。
税務署から電話連絡があった場合、無用な加算税を課されない
ための正しい対応方法については下記をご覧ください。
「税務署からの電話で確認すべきこと」
https://kachiel.jp/?p=12746
年々厳しくなっている、消費税還付法人に対する税務調査
ですが、連年で調査件数が130%超増えており、
不正件数および追徴税額も上がっていることから、
インボイス制度施行以後はさらに、還付申告が通りにくい、
かつ税務調査の対象になることが予想されます。
なお、個人事業主など所得税に関する
調査事績については、下記をご覧ください。
「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf
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