令和5年分から施行『財産債務調書制度等の見直し』
※2023年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、
「令和5年分から施行『財産債務調書制度等の見直し』」です。
年が過ぎるのは早いものでもう年末ですね。
年を越せば・・・
やってくるのは「確定申告」
今回は、確定申告に関係するテーマとして
令和4年度税制改正事項である
「財産債務調書制度等の見直し」を取り上げます。
まずは・・・
根拠法令を確認します。
財産債務調書の提出が求められる根拠は
内国税の適正な課税の確保を図るための
国外送金等に係る調書の提出等に関する法律
(以下、国外送金等調書法という)6条の2となります。
国外送金等調書法には
●国外送金調書等調書の提出(同法4条)
●国外財産調書の提出(同法5条)
●財産債務調書の提出(同法6条の2)
などが規定されており、その中の1つとして
財産債務調書が位置付けられています。
それでは、同制度における改正事項を確認します。
1.提出義務者
(1)改正前(以下のいずれも満たす者)
・その年分の退職所得を除く各種所得の
金額の合計額が2,000万円超の場合
・その年の12月31日において、その合計額が3億円
以上の財産又は1億円以上の国外財産特例対象財産
(有価証券等)を有する場合
(2)改正後
上記を満たす者に加えて・・・
以下の者も提出義務者となります。
・その年の12月31日において、その合計額が
10億円以上の財産を有する場合
★実務上のポイント
改正前は財産が10億円以上あっても
所得をコントロールすることで
提出義務を免れることが可能でしたが
改正後は財産額のみで判定されるケース
(高騰した自社株を保有する会社オーナーなど)
で提出義務を課せられる者が増加するものと
予想されます。
2.提出時期の後ろ倒し
(1)改正前
令和4年分以前の財産債務調書については
その年の翌年の3月15日
(2)改正後
令和5年分以降の財産債務調書については
その年の翌年の6月30日
★実務上のポイント
これまで確定申告期限までと繁忙時期と
重なっていたため、事前準備が必要でしたが、
令和5年分以降は、繁忙時期を避けた時期
となっているため、相続税試算のタイミング
で実施することが可能となります。
提出期日の翌日には、路線価発表を控えて
いるため、富裕層向けのサービス提供タイミング
としては非常にやりやすくなります。
3.記載の簡略化
(1)改正前
100万円未満の家庭用財産や事業用の未収入金など
は記載を省略することが可能であった。
(2)改正後
300万円未満の家庭用財産や事業用の未収入金など
は記載を省略することが可能となった。
新たに預貯金についても記載を一部省略することが
可能となった。
具体的には、
(事業用の未収入金、借入金未払金その他の債務)
・所在別に区別することなく、件数及び総額で
記載することのできる範囲が拡大します。
(家庭用財産)
・記載を省略することができる範囲が拡大します。
(預入高が50万円未満の預貯金口座)
・新たに記載を省略することができます。
(減価償却資産)
・資産ごとに区分して記載することなく、
総額で記載することができます。
★実務上のポイント
令和5年分の財産債務調書を作成しながら
検討することになりますが、作業量が減少する
ことに繋がります。
翌年以降も同様の作業とできるよう、
マニュアルを作成しておくことが望ましい。
参照:財務省HP「税制改正の解説」P766
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/explanation/PDF/p0735-0796.pdf
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