任意か強制か?
※2014年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
先日、元査察官の浅地税理士をお招きして講演いただいたのですが、
その質疑応答(販売中のDVDではカットされています)
の中で、こういう質問がありました。
「料調(りょうちょう:国税局の資料調査課)の無予告調査を受けた際に、調査官が『料調の税務調査は特別なので、この無予告調査は受けなければなりません。』と言われました。かなり強権的な印象でしたので、そのまま無予告調査を受け入れてしまいました。このような場合、どのように対処すればよかったのでしょうか?」
一般的にいう「税務調査」をきちんと区分して説明しておきましょう。
まず整理しておくべきは、
税務調査:国税通則法に定める質問検査権に基づく行為
強制調査:国税犯則取締法に基づく行為
という、決定的な違いです。
簡単にいえば、裁判所の令状があれば「強制調査」であり、
それ以外は、すべて「税務調査」となります。
これは、調査に来た相手方の在籍部署等に関係ありません。
例えば、国税査察官が来たとしても、裁判所の令状がない限りは、
あくまでも(一般的な)税務調査に分類されます。
実際にあるのが、顧問先に強制調査が入ったとして、
事情聴取のために顧問税理士のところに来る行為は、
国税査察官が来たとしても、税務調査に分類されます。
よく、一般的な税務調査を「任意調査」と呼びますが、
これは税務調査を受けても受けなくてもいい、
という意味の「任意」ではないことに注意が必要です。
裁判所の令状を持って入る国税査察官(通称「マルサ」)が行う
「強制調査」とは対照的という意味合いにおいて「任意調査」
と呼んでいるにすぎません。
税務調査を断ることができないのは、法律の解釈からになります。
国税通則法第127条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)、第七十四条の四(第三項を除く。)、
第七十四条の五(第一号二、第二号二、第三号二及び第四号二を除く。)若しくは
第七十四条の六(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、
若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは
封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第七十四条の二から第七十四条の六までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、
正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載しくは記録をした
帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者
この法律規定は、税務署職員に質問検査権という権限を与える一方で、納税者がする、質問検査権をないがしろにする行為に対して
「罰則」を与えるものです。
つまり、調査を拒否したり、調査官が質問したことに対して何も答えなかったり、嘘を答えたような場合、また税務調査で偽物の帳簿を提示した場合は、
「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」
という罰則が定められているのです。
この規定は一般的に、「受忍義務」と呼ばれています。
ですから法律上、税務調査は断れないと解釈することができます。
ただし、(一般的な)税務調査における無予告調査の場合、
その時間・その場で調査を受けなければならないわけではないですから、日時調整して他の日にしてもらうことが可能です。
(こういう観点からは、任意ともいえます)
一方で強制調査の場合、裁判所の令状に、日付・場所が明示
されていますから、日程調整などすることはできません
(だからこそ、強制調査と呼ばれるわけです)。
話を冒頭に戻すと、料調であろうと、どの部署であろうと、
裁判所の令状がない限りは、税務調査は税務調査であって、
質問検査権の範囲・程度は同じです。
特に、料調の調査官は「自分たちが特別だ」という
主張をすることがありますが、何も特別ではありません。
こう言い放つ調査官に対しては、
「では、何法に基づいて調査に来たのですか?」
と問いただすべきです。
令状が無い限り、こう聞かれると調査官は
「国税通則法」と答えることになります。というわけで、
一般の税務調査と同じことが判明するわけです。
料調による無予告調査であっても、
通常の無予告調査と一緒で、日程調整することが可能なのです。
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