低解約型の逓増定期保険の個人名変の是非
※2016年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「低解約型の逓増定期保険の個人名変の是非」ですが、
裁決ではなく、私の考え方をお話ししたいと思います。
低解約型の逓増定期保険の個人名変に加入している顧問先もありますが、
税理士からもこの是非についてよく聞かれるので、ここで整理しておきます。
「週刊税務通信」(No3402、平成28年3月28日号)に
「合理性なければ否認されるリスクも」と題し、下記と述べられています。
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所得税基本通達36−37<保険契約等に関する権利の評価>も、『低解約
返戻金型逓増定期保険』などといった新たな保険商品を念頭に置いているとは
考えにくい。そのため、形式的にはこの通達に沿った形での課税の処理を
行っていても、個別の事実関係によっては、個人の受ける経済的利益の額の
評価として合理性があるものとは言い切れず、税務上、否認されるリスクが
生じることになるだろう。
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ただ、この記事は新たな事例や情報が出たから書かれた記事ではなく、
従来も議論されてきたリスクを改めて記事にしたものと思われます。
新たな事例や情報が出た訳ではないことについては、とある保険税務の
第一人者の方にも確認をした情報です。
では、これが実際に否認されるリスクはあるのでしょうか?
個人的には、「現状の」税務調査においては否認される確率は非常に低いと
考えていますし、否認事例を聞いたこともありません。
ただし、これに関して修正申告を書かされた事例はありますが、
それは納税者と税理士が勝手に認めてしまっただけの話です。
同族会社等の行為計算の否認が「法人税につき更正又は決定をする場合に
おいて」ということを前提にしている以上、これを否定するならば、更正
または決定という手続きしか「本来は」ないのです。
実際、数年前にある外資系生命保険会社に調査が入り、個人名変をした
契約者のデータをベースに全国的に税務調査が行われたことがありました。
ただ、この時も法人側の否認ではなく、
(1)個人の無申告の事案
(2)一時所得の計算上、法人が支払った保険料も必要経費に算入していた事案
につき、問題となっただけです。
あの規模でやったにも関わらず、法人側での否認が起きていないということは
「現状においては」否認されにくいと言えるでしょう。
私は「保険契約を法人から個人に売買した理由はどう答えればいいですか?」
と聞かれることも多いですが、「誰もが納得せざるを得ない合理的な理由」は
ありません。
そもそも本音を言えば、「法人のお金を利用した個人の節税」な訳ですから。
ただ、それはともかくとして、現状においては否認されにくいことは事実です。
ただし、将来的なリスクは分かりません。
生命保険と節税の歴史はいたちごっこを繰り返してきた側面もありますので、
5年後、10年後のことは誰にも分かりません。
結果として、現状においては否認されることはまずないことから、
私はこのスキーム自体を否定的には考えていません。
しかし、今後の契約に関しては
「加入後に個人名変するまでの期間」+「税務調査が遡及する期間(5年間)」
というある程度の中長期的な否認リスクも検討した上で実行すべきなのです。
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