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2016.04.28

低額譲渡と第二次納税義務

※2014年11月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

今回は「低額譲渡と第二次納税義務」ですが、

平成12年5月31日の裁決を取り上げます。

本件は国徴法39条に定める「無償又は著しい低額の譲受人等の第二次

納税義務」について争われた事案です。

具体的内容の前に条文、通達を確認しましょう。

○ 国税徴収法第39条

滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると

認められる場合において、その不足すると認められることが、当該国税の法定

納期限の一年前の日以後に、滞納者がその財産につき行つた政令で定める

無償又は著しく低い額の対価による譲渡(担保の目的でする譲渡を除く。)、

債務の免除その他第三者に利益を与える処分に基因すると認められるときは、

これらの処分により権利を取得し、又は義務を免かれた者は、これらの処分に

より受けた利益が現に存する限度(これらの者がその処分の時にその滞納者の

親族その他の特殊関係者であるときは、これらの処分により受けた利益の限度)

において、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

○ 国税徴収基本通達第39条関係7(当時は6)「著しく低い額の対価の判定」

法第39条の「著しく低い額の対価」によるものであるかどうかは、当該財産

の種類、数量の多寡、時価と対価の差額の大小等を総合的に勘案して、社会

通念上、通常の取引に比べ著しく低い額の対価であるかどうかによって判定

し(平成2.2.15広島地判、平成13.11.9福岡高判参照)、次のことに留意する。

(1) 一般に時価が明確な財産(上場株式、社債等)については、対価が時価

より低廉な場合には、その差額が比較的僅少であっても、「著しく低い額」と

判定すべき場合があること。

(2) 値幅のある財産(不動産等)については、対価が時価のおおむね2分の1

に満たない場合は、特段の事情のない限り、「著しく低い額」と判定すること。

ただし、おおむね2分の1とは、2分の1前後のある程度幅をもった概念をいい、

2分の1をある程度上回っても、諸般の事情に照らし、「著しく低い額」と判定

すべき場合があること。

これに関し、滞納税金がある納税者E(平成9年4月12日死亡)から

不動産を1億円で譲り受けた請求人につき、「著しく低い額の対価による譲渡」

であるとして、請求人に第二次納税義務が課せられた事案です。

この事案では原処分庁は下記と主張しました。

○「著しく低い額の対価」に当たるか否かは、公平の理念に照らし、譲渡に

係る財産の種類、数量の多寡及び時価と対価の差額の大小等を総合的に考慮し、

当該対価が、時価に比して社会通念上著しく低いと認められるか否かによって

判断すべきであり、国税徴収法基本通達第39条関係6《著しく低い額の対価の

判定》(以下「本件通達」という。)も「『著しく低い額の対価』によるもの

であるかどうかは、社会通念上、通常の取引に比べ著しく低い額の対価である

かどうかによって判定する」と定めている。

なお、対価が時価の2分の1に満たないことは、本件通達の注書の1及び2に

「値幅のある財産については、特別の事情がない限り、時価のおおむね2分の1

に満たない価額をもって著しく低いと判定しても差し支えない」、「対価が

時価の2分の1を超えている場合においても、その行為の実態に照らし、時価と

対価との差額に相当する金員等の無償譲渡等の処分がされていると認められる

場合があることに留意する」と定められているように、「著しく低い額の対価」

に該当するか否かの一応の目安にすぎず、その画一的な基準とはいえない。

○ 本件不動産の平成8年12月6日現在における時価は185,000,000円以上である

から、当該時価に対する本件対価の割合は約54%以下となり、当該対価は本件

通達に定める「時価のおおむね2分の1に満たない価額」といえるし、仮に当該

時価が、請求人の本件異議申立ての際の主張のとおり150,000,000円程度で

あったとしても、当該時価との差額は、50,000,000円と非常に高額である。

○ 請求人は、不動産売買業を営む会社であり、もともと不動産取引に精通

しているところ、本件においては、特に、請求人の代表取締役であったGと

本件滞納者の妻の両親との間に交友があったことから、その資産状況等を承知

の上で本件譲渡を受けたのであり、平成8年12月20日に本件対価を支払う際も、

請求人、株式会社H及びG(以下、請求人及び株式会社Hと併せて「請求人ら」

という。)のEに対する貸付金(それぞれ11,000,000円、18,500,000円及び

11,000,000円)並びに本件建物の賃貸借契約に係る敷金返還義務の承継分

(1,050,000円)を差し引いて、その債権の回収を図る一方、Eが他の債権者

からの追及を免れるように、本件譲渡に係る所有権移転登記手続をその契約書

作成前に了することに協力するなどしているのであって、本件通達の注書の1

に定める特別の事情があるといえるのはもちろん、上記のように請求人らがE

に対する貸付金等の弁済を優先して受けていることは、民法第424条第1項に

規定する詐害行為にも該当する。

○ 本件対価は、社会通念上、徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価」

に当たるというべきである。

そして、審判所は下記と判断したのでした。

○ 著しく低い額と認められるか否かは、結局、その財産の種類、数量の多寡、

時価と対価の差額の大小、その他諸般の事情を総合的に考慮して、当該取引

価格が通常の取引価格、すなわち時価に比較して社会通念上著しく低い額と

認められるか否かにより判断するほかなく、不動産のように、時価が必ずしも

明確ではなく、人によりその評価を異にする値幅のある財産については、

本件通達の注書の1に定めるように、時価のおおむね2分の1に満たない額を

もって、著しく低い額による対価と解するのが相当である。

○ 本件不動産の時価について、〔1〕I銀行本店が請求人に本件不動産の購入

資金を融資し、当該不動産に根抵当権を設定した際の同銀行の評価額が

203,368,000円であること、〔2〕原処分庁が算定した概算見積額が

193,500,000円であること、及び〔3〕原処分庁の依頼に係る不動産鑑定士の

鑑定評価額が185,000,000円であることから、当該不動産の時価は少なくとも

185,000,000円以上である旨主張する。

しかしながら、金融機関が担保権を設定するためにした評価を直ちに本件

不動産の時価とすることはできないし、原処分庁は、その主張する評価額の

算定の方法、あるいは算定の基礎となった資料等を明らかにしていないので、

当審判所としても、当該評価額を合理的なものということは困難であり、

そのいずれの評価額も本件不動産の時価ということはできない。

○ 他方、請求人は、別表3に記載の各不動産の譲渡価格を基に、本件不動産

の時価は約110,000,000円である旨主張する。

しかしながら、別表3に記載の各不動産と本件不動産とでは、その形状や

地理的条件等を異にしており、その譲渡価格から本件不動産の時価を算定する

こともまた困難といわざるを得ない。

○ 審判所の依頼した不動産鑑定士による評価額は約165,000,000円である。

○ 本件不動産は時価の約61%の価額で譲渡されたことになり、本件対価は、

当該不動産の時価の2分の1を相当上回ることになる。

もっとも、原処分庁は、時価の2分の1に満たないことは一応の目安であって、

画一的な基準ではないし、本件譲渡については、時価と対価の差額が高額で

あること、及び上記の特別の事情があることからすると、本件対価は、なお

社会通念上「著しく低い額の対価」といえる旨主張する。

確かに、著しく低いかどうかは社会通念上の総合判断であり、本件通達に

定める「おおむね2分の1」という基準も、文字通り幅のある概念であるから、

本件通達の注書の1に定める「特別の事情」が、対価が時価の2分の1を超えても、

なお「著しく低い額の対価」と判定して差し支えない事情を指しているもの

であるかどうかはともかく、その財産の種類、数量の多寡、時価と対価の差額

の大小、その他諸般の事情によっては、対価が時価の2分の1を多少超えても、

なお、社会通念上「著しく低い額の対価」というべき場合があることを否定

するものではない。

しかしながら、本件対価については、上記のとおり、時価の約61%とその

2分の1を相当上回っている上、当審判所の調査によれば、請求人は、税金の

納付等のため本件不動産の売却を急ぐEらに懇願されて、特に需要もなく転売

の見込みもない本件不動産を譲り受けることとし、実際、現在に至るまで

転売もしていないのであって、このような状況を考えると、本件対価とその

時価との差額が65,000,000円に及ぶからといって、請求人に補充的に納税義務

を負わせなければ公平の理念に反するとはいえない。

○ 原処分庁は、詐害行為に該当する行為もあるとして、請求人は第二次納税

義務を負うべきである旨の主張もする。

しかしながら、第二次納税義務の制度は、租税債権の効力を強化し、当該債権

の保護を図るという点で、詐害行為取消権と同様の機能を果たしている面は

あるものの、詐害行為取消権は、法律行為を取り消して、債務者の責任財産を

保全する制度で、その取消権者に優先弁済権を与えるものではないのに対し、

第二次納税義務の制度は、法律行為を取り消すことなく、補充的に納税義務を

負わせるものである点で、制度の趣旨を異にし、またその要件、効果も異に

しているのであって、仮に詐害行為に該当する行為があるとしても、そうで

あるからといって当然に請求人が第二次納税義務を負うことにはならない。

いかがでしょうか?

この事案では

○ 「時価の約61%」が、その2分の1を【相当】上回っていると判断

されたこと

○ 国税徴収法第39条と詐害行為とは制度が別であるため、両社は直接的に

関係しないこと

などが注目すべき点です。

なお、第二次納税義務に関して補足しておきますが、第二次納税義務者が

告知処分を受けた後に、本来の「主たる納税義務」につき、主たる納税義務者

に【代わって】、当該納税義務につき、争うことができることも併せて憶えて

おいて頂ければと思います(最高裁、平成18年1月19日)。

最後に、徴収に関しては「本当のノウハウ」が書かれた書籍も無く、

我々税理士が実際の滞納案件等に出会った場合には、どうすべきかに

迷うことも多々あります。

具体的には、下記のような事案です。

○ 滞納税金の分割納付は最長何年まで可能なのか?

○ どうなったら、滞納税金の免除がされるのか?

○ 差押えになるならないの判断基準とは?

また、国税OB税理士も税務調査をやってきた課税部門出身の方が大半で、

徴収部門出身の税理士は非常に数が少ないことも事実です。

なぜならば、徴収部門は「滞納になっている税金を納めさせること」が

仕事であり、「一般的な税法とは関係ない世界」にいるからです。

結果、顧問先が「滞納」、「差押え」、「財産の換価」などの状況に

なったとしても、税理士が適切な対応をできていないケースもあります。

そこで、私が企画段階から加わり、公開しているサービスがあります。

それは

○ メーリングリストを通じ、税理士が滞納、差押え、換価等に関する質問

をする

○ 元国税徴収官(2名)が質問に答える

○ メーリングリストなので、質問&回答を会員の「全員」が共有

というサービスです。

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月額料金も【3,000円】
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また、このサービスの対象者は税理士、会計事務所職員ですが、

これら以外の方の入会も可能です。

ただし、ご質問頂けるのは税理士、会計事務所職員の方のみです。

それから、メーリングリストというサービスの特性上、過去の投稿は

見られない仕様になっています。

途中からのご入会者様は過去に投稿されたノウハウが見られないので、

この点はご了承ください。

私自身、ここで質問させて頂いたことで、顧問先の納税に関し、社長が

納税保証人になることを回避できました。

本サービスを企画して本当に良かったと、私自身が感じていますので、

是非、この機会にお申込み頂ければと思います。

 

見田村元宣

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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