保守契約と短期前払費用
※2016年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「保守契約と短期前払費用」について解説します。
以前のメルマガで下記判決と裁決を挙げ、短期前払費用に該当するためには、
役務の内容が「等質等量」でなければならない旨を書き、税理士の顧問料は
なり得ないため、短期前払費用に該当しないと解説しました。
これは国税庁の質疑応答事例の「法事例0709 前払費用の経理」でも
解説されています。
〇 東京地裁(平成19年6月29日)
本件通達は、企業としては、前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の
提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ
提供を受けていない役務に対応するもの)はその支出をする時の費用に計上
する経理処理を行っていることが多く、これらについて厳密な期間計算を
行って税務上別個の計算を行う実益を捨ててもさして弊害がないと思われる
ことから、企業におけるこれら期間損益の処理を特例的に是認する取扱い
であると解されるところ、その役務が等量等質のものではない場合には、
時の経過に応じて収益と対応させる必要があることから、本件通達による
特例的取扱いは認められないものと解すべきである。
〇 国税不服審判所裁決(平成16年3月24日)
所得税基本通達37—30の2で述べた前払費用とは、〔1〕一定の契約に
従って継続的に提供を受けること、すなわち、等質等量のサービスがその
契約期間中継続的に提供されること、〔2〕役務の提供の対価であること、
〔3〕翌年以降において時の経過に応じて費用化されるものであること、
〔4〕現実にその対価として支払ったものであることの4つの要件の
すべてを満たす費用と解するのが相当である。
では、ここからが本題ですが、企業経営をしていれば、パソコンなども含め、
様々な保守契約を結ぶことがあります。
この保守料は短期前払費用の対象になるのでしょうか?
たとえば、毎月の保守料は定額でも、提供される役務の内容は
等質等量にはなり得ないケースがほとんどでしょう。
では、保守料は短期前払費用の対象にならないのでしょうか?
短期前払費用の「本来の考え方」からすれば、対象にはならないはずですが、
国税庁が発表している「消費税引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に
関するQ&A」の中に下記記述があります。
7 短期前払費用(短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除)
問9 当社(12 月決算法人)は、平成 25 年 12 月に、
平成 26 年1月から 12 月までの1年間の保守契約を締結し、
同月中に1年分の保守料金を支払いました。(以下、略)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/kaisei/pdf/201401qa.pdf
これは消費税に関する解説であり、保守料と短期前払費用の可否に関する
ものではありませんが、そもそも論として、保守料が短期前払費用に
該当する前提での記述です。
結果、理論的にはおかしい部分はありますが、
何かしらの保守料について短期前払費用の適用をしたとしても、
本解説があることから、実務上は問題にならないものと考えます。
仮に、税務調査での指摘を受けたならば、本事例を提示すれば、
その否認指摘は引っ込むことでしょう。
異動前の税務調査の季節も終わろうとしていますが、もし、これが論点に
なっているようなケースがあれば、上記資料を提示し、反論して下さい。
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